えいがうるふ

借りぐらしのアリエッティのえいがうるふのレビュー・感想・評価

借りぐらしのアリエッティ(2010年製作の映画)
3.9
ジブリ作品としては過小評価されている気がする一作。
スケールが小さいっていうけれど、壮大な連作物の冒頭部分を描いているんだから仕方ない。私自身はむしろ文字通り地に足の付いた小人の生活が伺える描写や、馴染みある関東地方の植生にこだわった美しい緑の映像に心癒される気がした。本来はハイジやコナンのようにテレビアニメとして少しずつエピソードを重ねる方がこの一連の物語に向いていると思うので、テレビ放映の末に映画化、の逆で映画につながるその後をテレビアニメ化というのがあったら面白いと思う。ジブリは映画を連作では作らない方針というのをどこかで読んだが、続きが気になるし、原作でその後を確認したくもなる。それを踏まえればかなり上出来なエンディングだと私は思った。

米林監督は未熟で宮崎監督はやっぱりすごいと評するのはたやすいが、おおもとの宮崎氏の脚本自体にやや無理がある気も。アリエッティが翔に出逢った瞬間から心引かれていたように見せておきながら、でも余計なコトして関わらないでよ!ってわざわざ決別宣言しに行くなんてどんだけツンデレ娘の設定なんだよ…。さらに難を言えばハルさんの行動の背景が分からない分、邪悪キャラとして悪目立ちしてしまった印象。私利私欲のために女主人の甥を部屋に閉じこめるなんて、普通解雇ものじゃないのか?

NHKで放映されたこの作品の制作過程のドキュメンタリーを見たが、宮崎氏は脚本提供以降はひたすら見守るだけで口出しをしない方針を貫いていたようで、制作途中で生じたであろう疑問や矛盾のすりあわせなしにここまで作り上げてみせた米林監督の今後に期待。