great兄やん

悪い子バビー/アブノーマルのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

4.6
【一言で言うと】
「“生”のむきだし」

[あらすじ]
母親の異常な愛情により、暗く汚い部屋の中に35年間も閉じ込められて生きてきたバビー。外に出れば汚染された空気の毒で命を落とすと教えられ、母親の指示に従うだけの日々を送っていた。そんなある日、父親を名乗る男が突然帰って来たことをきっかけに、バビーの人生は大きく動き出す。刺激に満ち溢れた外の世界へ飛び出したバビーは行く先々で大暴走を繰り広げ、そんな彼の自由で荒々しいスタイルに誰もが巻き込まれていく...。

誠にイカれてやがる。『Mr.ビーン』のような奇想天外な大暴走をよりシリアスに、よりクレイジーに振り切った描写には言葉を失ったし、東京に馳せ参じた初日に観る映画として選ぶにはかなり挑戦的ではあったが、これがまぁ予想を思いっきり覆すハートウォーミングな映画として仕上がっていたのが本当にビックリだった。なんなんだこの映画は(・・;)...

主人公バビーもとい長年もの間劇場公開されずに“封印”されてきた作品がしれっと世に放出される意外さもだし、大衆性をガン無視したアングラ感の濃さが封印の理由なのかもしれないが、個人的にはメチャクチャ面白かったしこういう奇妙な映画はマジで大好物です笑。

とにかく異常かつ異質。映画として映すには余りにも“タブー”にまみれており、今の時代では確実に描くことすら憚れるようなセンシティブさをどストレートに表現しきってるのが凄すぎてビビる笑。
毒親のネグレクトに近い“愛情”はもちろん近親相姦にネコの“サランラップ”など、まぁコンプライアンスもへったくれもないネガティブ要素が満載なのだが、バビーのそれが悪意のない“ピュア”な行為として映っているからか、胸糞悪さを通り越してもはや笑ってしまうほどでもある笑笑。

そんなこんなでひょんなことからバビーが外に出るチャンスをものにするのだが、ここからの展開がまぁ怒涛の展開でひたすら面白い🤣🤣🤣
ロクな教育や教養もなく幼児レベルの知能しかないバビーが様々な人に出会って放浪の旅を続けていく訳だけど、このバビーと出会う人のキャラもメチャクチャ濃くて笑ったし、バビーもバビーで出会う人の言葉や仕草の真似をしてコミュニケーションを実践するのだが、習う言葉や仕草がことごとく汚いスラングや罵詈雑言の言葉だから裏目に出てボコボコにされたりと色々不憫な思いをするのがすっごく可哀想でした笑。

それに画面から滲み出る“汚さ”もハンパないですし、常に薄汚れた世界観がより一層目をしかめるような“臭さ”を放っているのが特徴的で、バビーの監禁部屋然り観ているこちらも画面外から臭ってきそうな“香ばしさ”を感じてしまうのがちょっと嫌でしたね(^◇^;)
まぁなんというか…ある程度は予想してたんですけどね笑。

とにかく純粋にも異常なバビーの“人生経験”に得も言われぬ不快感がありつつも、“過去”から脱却し新たな人生を奮闘する姿に何故か感動すらしてしまう一本でした!

鬱屈とネガティヴに溢れた前半から徐々にポジティブな“温かさ”を感じる後半という、ファンタジー要素の強いストーリーも予想外で終始新鮮な気持ちで楽しめましたし、なんと言っても“音楽”がきっかけでドス黒い毒親のしつけから“解放”されるってのが最高にロックでメチャクチャ清々しい気持ちを味わえる。

“性”に“食事”に“オッパイ(笑)”にと、様々な欲をむき出しに演じ切ったニコラス・ホープの演技力にも脱帽ですし、気になってる人は是非とも観てほしい一作。あ、猫好きはかなり閲覧注意かもです(ー ー;)...