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わが谷は緑なりきのろのレビュー・感想・評価

わが谷は緑なりき(1941年製作の映画)
4.8

「磨かないとランプも輝きを失う。心を磨くんだ」

ジョンフォード監督の映画は「駅馬車」も「怒りの葡萄」も見どころが多くて、レビューをまとめるのがすごく難しかったけれど、今回も盛りだくさん!「風と共に去りぬ」と同じぐらい、「今日は映画観たなぁ~~!」って気持ちになります。


主人公が子どもの頃を振り返るところから、物語は始まる。

緑豊かな谷に生まれ育った主人公ヒュー。
両親と5人の兄、姉のアンハード(モーリンオハラ)とともに暮らしていた。父と兄は炭鉱で働き、家族そろって食卓を囲む。慎ましく幸せな生活を送っていた。
そんなある日、炭鉱が賃下げをする。

明るい歌声で溢れていた谷は、空腹と絶望に満たされる。

ストを起こそうとする労働者と対立するヒューの父。
そんな父の代わりに集会に行ったヒューと母は、労働者たちに向かって演説。しかしその帰り道、真冬の川に転落してしまう。
運よく命は助かったものの、足が動かなくなってしまう。

医者に「もう歩けなくなるかもしれない」と言われ、落ち込むヒュー。そんな彼を励ますのが若い牧師グリュフィード。「神様も心変わりするかもしれないよ」そう言って「宝島」をプレゼントしてくれる。
もうこの場面、本当に本当に美しいの。元気がなかったヒューの顔が一気に明るくなって、瞳がキラキラと輝いて。心がじんわり温かくなって、気付いたらめちゃくちゃ泣いていた(笑)
「お早よう」のラスト、ナショナルテレビの箱が映るカットぐらい好きなシーン。

お母さんとヒュー、2人の看病をするうちに離れかけていた家族の気持ちが一つに…。


ヒューの初登校、叶わない恋と望まぬ結婚、突然の兄の死、新たな命の誕生、そして無責任な陰口。

ありもしないウワサが谷全体に広がり、ヒューたち一家は隣人から白い目で見られる。
お母さんがヒューにかけた言葉。
「みんなの目が濁っているのよ。そういう人たちはお前の時代にはいなくなればいい」
ああ、本当にその通りだ。でもきっとこれから先もなくならない。
そう思うと、悲しいんだかなんだか分からない気持ちになって、またまた泣いてしまいました。


世の無情と同時に、人の温かみに触れる映画。


「父のような男に死という言葉はない。今も記憶に生き続け、愛を教えてくれる。わが谷は緑だった」
ろ