滝和也

カリフォルニア・ドールズの滝和也のレビュー・感想・評価

カリフォルニア・ドールズ(1981年製作の映画)
4.0
必殺!ローリングクラッチ
ホールド!
GO!カリフォルニア
ドールズ!

米国女子プロレスの悲哀と
若きレスラーの成長と
栄光を描いた名匠
ロバート・アルドリッチ監督
の遺作…

「カリフォルニア・ドールズ」

最近何年かぶりにプロレス熱が高まり、試合をYou Tubeで見まくってます(笑)ただ、新日のGO ACEでお馴染みの棚橋弘至さん主演のプロレス映画、パパはわるものチャンピオンが見に行けず…そんな時に思い出したのが、この作品です。

マネージャーのハリーと女子レスラー、アイリスとモリーのタッグチーム、カリフォルニアドールズは、車一台で各地の試合を転戦。各地のプロモーターとぶつかったりで、中々チャンスが回って来なかった。その日の暮らしも危うく、泥レスにまで出ざる得ない始末だったが、ある日プロレスマガジンで紹介された彼女達にビッグチャンスが訪れる…、だがそのプロモーターは嘗てハリーと衝突した奴で…。

女性版ロッキーであり、コメディテイストを入れてより楽しめる作品になってます。笑いあり哀愁があって、プロレスと言う世界に相応しいエンタメ作品になってます。

この車一台で各地を転戦すると言うのは、オールドアメリカンなスタイルで昔のレスラーとはそんな感じ。男子はNWAと言う巨大な組合組織があり、各テリトリーをプロモーターがしきる。まぁマフィアだったりもあったそうですが、そのテリトリーを各選手が回って稼ぐ形でした。なので、レスラー同士で一緒に車に乗っていくのは当たり前。一部の人気選手だけが地域のチャンプとしてテリトリーに君臨し、その中のキングが世界チャンプな訳です。

それ故、ロードムービー的な要素もあり、各地のモーテルからモーテルへ移っていきながら、試合をする彼女たちにはリアリティもある訳なんです。

またプロモーターとの交渉はマネージャーがしますが、これは女子プロレスらしいのかな。男子にはあまりいない気もします。そのポジションのハリーを演じるのはピーター・フォーク。胡散臭さとクレバーさを併せ持つベテラン敏腕マネージャーです。彼女たちと成功することを夢見てハンドルを握り西へ東へ。そのしょぼくれた感じがまたリアリティを増してますよね。

そんなハリーを信じて体を張るアイリスとモリー。二人ともあまり目立つ女優さんではないのですが、この作品は別。正に体を張る演技と美しさで見事にプロレスの試合を成立させてます。オールドスタイルの女子プロレスなんですが、これかなり迫力ありますし、女優さんがやってると全く気にならないレベルですからね。また泥レスや他のシーンで体を張る(笑)シーンもありますし。チャンスを掴むためとは言え可哀そうなんですよね〜(T_T)

ラストのリオでの試合は…まさかの全女で昔あったレフリーが阿部四郎(笑)並み。あ、全女がこれモチーフにしてたんだ。極悪同盟対クラッシュギャルズの構図と全く一緒かい(笑)まぁオールドスタイルでは良くあるのかな(^^)このスタイルのラストは確かに爽快感がありますよね。

因みに当時人気のミミ萩原とジャンボ堀選手も冒頭出ていてある技を披露しています。この前方回転エビ固めがキーとなって響いてくるので大事な役です。因みに今では基本技になってますが、危険な技なんです。最近ベテランの高山善廣さんがこれで大怪我されてます(T_T)早い復帰、復活を願ってます(T_T)

ロック様と言うスーパースターを輩出したWWEと言うMadisonSquareGardenを拠点としたエンタメ企業が制圧してしまったアメリカンプロレスですが、まだまだ各地にインディー団体があり、こんな感じで哀愁を引きずるレスラーたちがまだいるんでしょう。その見世物感や哀愁に惹かれますし、その魅せる格闘と言うジャンルの曖昧さや激しさがまた人を魅了して止まないですよね。

アルドリッチと言うと男臭い映画がイメージされますが、女性ものとしても上手いなと思いますし、これは近年のレスラーと並ぶプロレスと言うジャンル映画として、ヒューマンコメディとしても傑作ですので是非ご覧下さい。

追記
悪徳プロモーターでロッキーのポーリー役のバート・ヤングが出てます。相変わらずの飄々とした演技で味がありますね。
滝和也

滝和也