鎌谷ミキ

ふがいない僕は空を見たの鎌谷ミキのレビュー・感想・評価

ふがいない僕は空を見た(2012年製作の映画)
5.0
【バカな恋愛をしたことない人なんて、この世にいるんですかね】

*邦画人間ドラマベスト一位の作品なので、いつもより長めになります。ベストムービー更新*

邦画ナンバーワン。私の中で本作を超えられる作品はなかなか出てこないと思う。勿論、個人的な趣味嗜好なんですが。テーマがとてもわかりやすい。"性と生""貧困""人が生まれてくること"監督は安定した作品をコンスタントに撮られてるタナダユキ監督。代表作になるべくものがR-18によって余計なイメージがついてしまってるのが残念であります(つまり知名度が低い)

ということで、サブスクやWOWOW等ではR-15版が主流だということが、ちょっと残念。多分それでも十分伝わるテーマなんですけれど。

R-18には理由があって。第8回[女による女のためのR-18文学賞]大賞受賞作「ミクマリ」が映像化されているからです。それが収録されているのが同タイトル『ふがいない僕は空を見た』著者は先日直木賞を受賞されて注目の窪美澄さん(エキストラを機にツイッターでやりとりしたことがあります)

ということでそう、私が出演しています。ネタバレに詳細書いときますので、ざっくり同人誌即売会とだけ。そこはスコアあまり関係ないですね。経験なくても満点です。エンドロールで名前を探してみてください。

内容についてなんですが、かなり原作に忠実なんですね。もしかして見られた方はいろんな方向に話がいく群像劇と思われたと思いますが、短編集でそれぞれの主人公を「ミクマリ」の主人公の高校生(永山絢斗くん)とクロスさせると…大変。本作はかなり自然ですし、これ以上削ぐこともできないと思われます。

R-18のテーマに触れるとなると"性"つまり不倫に触れることになるのですが…(田畑智子さんの話)セックスの本質の話です。私が常々感じてることが描かれてる。窪先生の原作が好きなのは、滑稽さが上手く描かれているんですね。さらに、妊娠・出産のコラムとかを経験されてるとのことで、原作で映画で描かれている"生"の部分は、リアル過ぎるぐらいです。流石、タナダ監督。本当に出産したシーンを上手く繋ぎ合わせています。実はあまり語りたくない部分ですね…あ、ネタバレになるからって意味です。何気に吉田羊さんがチョイ役で紛れてます。これまた偶然。原田美枝子さん演じる主人公の母親はシングルマザー…

ここまで"性と生"が上手く繋がる作品、他にあったら教えて欲しいレベルでスゴくいいです。刺激的かつ、温かい。

"貧困"について。こちらはどうしてその環境に置かれているか、なんですね。高校生を演じていた窪田正孝くんがとにかくよくて。ドア越しの演技とか、何度観ても辛い…なんでこんな思いをさせてるんだと、母親になってから3度目に観てもまだ思います。これは永遠のテーマです、子育ての。そこに"生まれてくることについて"もクロスしてます。

…とにかく見どころが多すぎるんです。贅沢な作品。長男が生まれた年に公開というタイミングも素晴らしく、確かに初回は補正が入っていたかも。もう3回目なので冷静に観ましたが、決して色褪せることはない。特に女性の普遍的なテーマが描かれているので、定期的に何度も見直したい。

私ができることは、一人でも多くの人に本作が(R-15版でもね)知れ渡ることかなと思います。タナダ監督、サイン会でもありがとうございました。パンフは家宝です。

余談:DVDなので特典映像があるのですが、トロント人で『月とチェリー』観てる人が…貴方とタナダユキを語り合いたいわ。
鎌谷ミキ

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