このレビューはネタバレを含みます
変わることのない「軌道」から導く幸福論
小惑星マチルダの軌道が地球から逸れないと確定するOPは絶望であると同時に、人類に共通する時間の平等さを再提示する。
その中で本作は、3パターンの人類の行動=軌道を描く。
1つ目は、残された時間を無軌道に謳歌する人達。
2つ目は、日常のルーティン=軌道を損なわず、これまでの歩みに誠実に向き合う人達。
そして3つ目は、ドッジとペニーの様に、人生最後の目的へ軌道を合わせる人だ。
これら幾つもの軌道からは、平等な時間の中に無数の価値観や幸福論が、宇宙の星屑の様に漂う構図が浮かぶ。
本作は、いずれ地球へ衝突する小惑星と、いずれ死へ衝突する私達の人生を重ね、時間という名の宇宙に漂う生命の煌めきを肯定する、人生讃歌だ。