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共喰いのhiyoriのレビュー・感想・評価

共喰い(2013年製作の映画)
3.8
田中慎也の受賞作を荒井晴彦脚本で映画化された作品。荒井晴彦が手掛けた作品は「さよなら歌舞伎町」「幼子我らに生まれ」「火口の二人」などを観たが、共通して男女関係の煩わしさが描かれている。中でも本作は性と心のバラバラ感を鮮明に表現した傑作だ。菅田将暉演じる、性に目覚め始めたまだ瑞々しさが残る青年の視点を通して田中裕子が演じる母やその他の女性の強さ又は男に対する怒りのようなものを表現している。脚本で凄く上手いと感じたのは、彼から男女関係の矛盾、心は殺したいほど憎んでいるのに体は望んでいるという事実を明確にしている点だ。
夏の腐敗的な陽光、生活排水で汚れた川、滴る大粒の汗、ゲリラ豪雨が最初から最後まで清純なものなど何一つないことを悟っている現場作りも素晴らしい。
この映画は観る人によって感想が異なる映画だと思うが、真面目に生きる、向き合うという平凡なことこそ難しいことだと感じる。また昭和の終わりを舞台にしているこの作品は新しい時代に向けた女性の秩序が築かれることを象徴しているのかもしれない。
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