このレビューはネタバレを含みます
たとえ実話ベースで、救いのある作品だとしても…この内容は観たくない人もいるでしょう。
死者22万人、負傷者13万人…家族全員が助かったのは幸運だったとしか言いようがないですね。
被災直後の混乱は計り知れない。そんな中で、自国に帰って『日常』を取り戻せた彼等の物語では…甘党が過ぎるんじゃない?
『それでも夜は明ける』での偏向と同じものを感じてしまって、個人的には素直に『良かったね』とは思えなかった。
大切な人、家族、友人、家も何もかも…津波に飲み込まれて、戻れる日常さえ失った人だっている。続くはずだった明日を失った人もね。
でも、非情な現実はそこに立ち塞がっていて…何もかも無くした後でも、続いていく日々に立ち向かって、歩を進めていくしかない。
私が本当に心を打たれるのだとしたら…
その姿にこそ、だと思います。
実際のところ現地では、人間の『逞しさ』『生命力』に感嘆させられるぐらい、めざましい復興が起きてますしね。
私が今作で最も残念なのは、最後の最後で『対岸の火事』にしてしまっていること。
必要なのは未曾有の災害の追体験や、痛みのリアリティではなくて…人がどうやって災害後の窮状に立ち向かって、団結する事ができたのかという道標であるべきだと思います。
そのアーカイブこそが、被災地と被災者たちが私たちに与えてくれる貴重な財産で…映画は、それを世界各地に伝える為のツールにもなれる。
それを忘れずにいたいですよね。