恭介

アンチヴァイラルの恭介のレビュー・感想・評価

アンチヴァイラル(2012年製作の映画)
3.0
さすがクローネンバーグの息子(笑)

初期の頃のクローネンバーグ作品を現代にアップデートしたような作風はお父さんからの影響なんだろうなぁ。

シーバースとかビデオドローム的なビジュアルが少し感じられてニヤリとした。

物語の設定が中々の斬新さというか、ぶっ飛び具合というか。

例えば貴方が愛して止まない俳優さんがいるとします。その俳優さんが病気になりました。愛し過ぎている貴方は、その俳優さんから直接採取した病気を買って自分の身体に取り入れ、俳優さんと一体感を味わいます・・・こんな商売が存在する世界のお話(笑)他にもその俳優さんから頂いた細胞から培養した食肉も売ってます。

んなアホなぁ、というかもしれませんが、そんなモノ買う人なんかいない!と言い切れない、ギリギリの絶妙なラインを狙った設定じゃないですか(笑)

そんな会社に勤めている本作の主人公は、傑作ドラマ、スリービルボードにて、オレンジジュース一杯でロックウェルの人間性を変えてしまったあのケイレブ・ランドリー・ジョーンズ君です。

彼は会社から無断で持ち出した病原菌を闇市で売りさばいており、それにより陰謀に巻き込まれて・・・というのがザックリとした物語のアウトラインです。

正直に言いますと・・・かなり好みが分かれる映画です。いやハッキリ分かれると思います(笑)

個人的な感想は、ビジュアル的には結構好きです。白黒赤を基調とした色彩感覚や壁一面の女性の顔写真とか・・あと、血の使い方?とか。

それと、主人公演じるケイレブ君がこの頃から素晴らしい熱演を魅せてくれます。彼も見た目からちょっと独特なビジュアルを持っていて、そこから放たれる、悶え苦しみ病む演技に魅入ってしまいます。血を吐くシーンなんか本気の吐血に見えてくるほどの熱演です。
自分も彼みたいに体温計を加えるだけで萌えさせる男になりたいと思いました(笑)

が。

前情報なしに観ると、途中でハテナマークが頭の中で飛び交う状態になるかもしれないぐらい説明が少ない。
なんなら、あぁーまぁ、ついてこれる人だけでいいよー的な、クローネンバーグJr監督の気持ちいい開き直りを感じられるかもしれません(笑)

あと、どうしてもお父さんと比べてしまって申し訳ないですが、映画としてのストーリー的な面白さでいうと、まだちょっと弱い気がしました。独特の世界観やビジュアルが先行してストーリーテリングの技法がついて来てない感じ。が、Jrの次作が楽しみになったのも事実です。けど、なかなか新作出ないですね。

万人受けはしないかもしれませんが、クセになる映画かも?

クローネンバーグ監督のファンや独特の味のある映画が好きな方はぜひ。クローネンバーグファンなら問題ないと思いますが、血に耐性のない方はキツイかも(笑)
恭介

恭介