滝和也

ラッシュ/プライドと友情の滝和也のレビュー・感想・評価

ラッシュ/プライドと友情(2013年製作の映画)
3.8
魂の走り、
死の恐怖と栄光、
現実と夢の狭間。
炎と氷の飽くなき戦い。

時はスーパーカーブーム。誰もがフェラーリ、カウンタックに憧れた時代。サーキットの狼が火をつけたブームを更に加速させたのは、頂点に立つもの達の伝説的な戦いである。炎の如く狂熱的な走りと華やかな容姿、イギリスの貴公子、ジェームス・ハント。氷の如く冷徹な走りとラットの異名を持つ不屈のオーストリア人、ニキ・ラウダ。彼らの熱き激闘を描く珠玉のF1ストーリーがこの作品だ。

小学生の私は彼らの事を知っていた
出会いは消しゴムだった。当時スーパーカーブームを牽引したのは、ガチャガチャから出て来るスーパーカーを模した消しゴム。これを学校で、外で使って遊ぶ。指で弾く又はボールペンのノック部を使い、弾き進める事でのレース。机の上で当てて落とし合うオトシ。当然勝ったものが奪えるそのギャンブル性に子供達はハマった。その延長線でマシンの特性やドライバーを知るものが尊敬された…。ある日ガチャから変な車が出てきた。三角のような車体、屋根もなくタイヤは外にはみ出している。それがF1マシンとの出会いだ。マクラーレン、フェラーリ、ブラバム、タイレル、ロータス…。ドライバー名も覚えていた…。

それ故、この作品の世界にはスンナリ入れ、この事実を描く作品に感銘を受けた。この作品の素晴らしいところはこの2人のライバルの描き方だろう。

全く相容れない2人であり、どこまで行っても平行線であるハントとラウダが、死線を超えて戦う中、認め合うその姿が、良い。決してベタベタする様な友情ではなく、事実として語られていく説得力、重みを感じる。またそのレースに望むスタンスの違いや、キャラクター表現はリアルだ。ハントを演じるクリス・ヘムズワース、ラウダを演じるダニエル・ブリュールもベストアクトだと思う。名匠ロン・ハワードも伝記ものに対し手堅い作りを見せてくれる。

レースシーンもマシンは当時そのままに再現されており、現在より遥かに死と隣り合わせだった時代を巧く再現し迫力をましている。

マクラーレンとフェラーリの因縁の対決。その流れは、プロフェッサーと呼ばれしプロストと神に選ばれし貴公子セナの対決と悲劇へと舞台を移す。日本での第二次F1ブームへと。

男の人生には、好敵手と書いて親友(とも)と読むものが必要なのかも知れない。この映画は淡々とリアルにそれを描いている。
滝和也

滝和也