さうすぽー

静かなる叫びのさうすぽーのレビュー・感想・評価

静かなる叫び(2009年製作の映画)
4.8
自己満足点 93点

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品、一挙レビュー第1段。

最近Twitter上でドゥニ・ヴィルヌーヴをレビューする事が流行っていて、僕も大好きな監督なのでこの際一挙にレビューしたいと思います!

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1989年にカナダのモントリオールの大学で実際に起きた銃乱射事件を描いた映画。
衝撃作とはまさしくこういう事!

凶悪な事件を起こした犯人の視点でも映画が展開される珍しい手法でありながらも、何の変哲も無い日常が惨劇に変わってしまう恐怖と何も罪の無い人達(主に女子達)が殺されていく悲劇を描いた傑作。


登場人物達の台詞や説明等をなるべく省いて、演者の表情や物悲しいクラシックギターが印象的な音楽、美的で独特のカメラワークで事件の悲惨さや群像劇を描いています。
その全てが完璧で非常に美しいので、静かでスローペースな映画ながらも引き込まれてしまいます。
上映時間は77分と非常に短いのですが、内容が濃密なので、良い意味で2時間くらいの長さ(丁度良い長さ)に感じて満足します。

この映画は全編モノクロですが、モノクロにして大いに正解だったと思います。
モノクロにすることで事件の悲惨さを「シンドラーのリスト」のように観やすいようにしつつ状況の悲惨さを描ききっているので、非常に感心しました。

また、ピカソの「ゲルニカ」(戦時中の無差別爆撃を描いた絵画)や大学の講義をストーリー展開の暗示に使ったりする辺り、他の映画でもみられるドゥニ・ヴィルヌーヴならではの手法にもなかなか唸らせてくれます。


この映画が凄まじいのは、この凶悪な犯人をただ悪役に描くのではなく、犯人の心情や声に耳を傾けるという事をやっています。それはかなり勇気のいる事だと思います。
だって、スタッフやプロデューサーに「遺族のことを考えろ!」と言われて却下されても全然おかしくない!多分言われたかもしれませんが、それを省みず描ききったのは本当にお見事です!
ラストの犯人の血の演出がそれを物語っていますね。

確かにこういった凶悪犯のやってることはイカれてるし、到底許される事ではありません。
しかし、そういった凶悪な犯人をただ断罪するのでなく、犯人の心情に自分達は耳を傾けなければならないとも思っているこの頃です。
でなければ、何故こういった事になったのか、どうすれば悲惨な事件は起きなくて済んだのか、それすら考える事が出来なくなるから。