えむえすぷらす

ハンナ・アーレントのえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
5.0
アイヒマン裁判を傍聴取材して「悪の凡庸さ」についてまとめたハンナ・アーレントを描いた作品。主にアイヒマン裁判前後の様子を描きつつ、恩師との恋と断絶、「悪の凡庸さ」でユダヤ人協力者にも矛先を向けた事で起きる出来事が描かれる。
本作最後のアーレントの講義は屈指の名演であり、また「悪の凡庸さ」を理解する為の優れた教材でもあると思う。

「悪の凡庸さ」についてはインドネシアで起きた虐殺を行った側の再現映画を追うドキュメンタリー映画「アクト・オブ・キリング」と合わせてみると、「悪」への一線を越える状況が現出した時、どう振る舞うべきかという究極の選択について考える材料となってお勧めです。決して対岸の火事ではないと思う。

追記:この映画のおかげか、ハンナ・アーレントの評伝が中公新書から出ました。本作上映中は高価な専門書しかなかったのでありがたいところです。