このレビューはネタバレを含みます
潜入捜査官もの。
自分の身分を担保する警察組織での上官と、ヤクザ組織で共にのしあがった兄弟分との挟間に立たされた男の悲哀を丹念に描いている。その丹念さにおいて、本作は鑑賞に値する傑作になっている。
また、蛮刀や金属バットが鳴らす鈍い低音の連打が響くカチコミ場面や、どう考えても２～３人は死んでいそうなカークラッシュシーンなど見どころも多い。
潜入捜査ものとしては珍しい「悪を選ぶ主人公」という意外性も楽しい。
ただ、例えば『悪いやつら』のようなゼロから１００を生みだすウルトラ下衆親父や、『哀しき獣』のマンガみたいな骨から肉を食らう朝鮮族の親分といった「怪物」の不在は画竜点睛を欠いてしまっている。
ラストの「おしっこ漏れちった！」と朗らかなチョンチョンの姿は愉快で楽しくて悲しい。
