〈妻を解き放つ二重世界〉
カトリーヌ・ドヌーヴ演じる不感症の妻が午後帯勤務の娼婦「昼顔」となる。『糧なき土地』『忘れられた人々』のような貧困層を見つめた作品には決して登場しない“贅沢な”道楽に耽ける二重世界の住人たちが続々と登場する。
ドヌーヴが娼婦業を始めた理由は、夫が求める妻の役割(=セックス)に応えるための秘かな訓練といったところ。哀れで歪んだ動機ではあるが、何にせよ彼女は汚れていくことを代償に生きた表情を恢復していく。それは当初の目論見どおり快楽を覚えることができたからなのだが、それ以上に「夫の知らないところで禁忌を犯している」という事実が彼女に自信や解放感を与えていったのだと思う。