なべ

湿地のなべのレビュー・感想・評価

湿地(2006年製作の映画)
3.0
 北欧ならではの重い空気感が鬱。寒いところの湿地がどれほど不快なのかわかりかねるが、晴れ間のないどんよりした天候はそれだけで嫌な感じだ。見たことがない役者ばかりなので、妙な先入観なく観られるのは新鮮だったが…。

 うん、実に凝ったプロット。でもお国柄なのか語り口にクセがある。レイヤーが何層かに分かれていて、それぞれの登場人物が事件に関与してるのに、事件への認識が異なっていてなかなかリンクしないのだ。何が起こっているのか、何が起きていないのかがわからず、おもしろそうな話なのにいまひとつのめりこめない。おもしろがれる部分を寸止めされてる気がしてモヤモヤするのだ。
 だいたいアイスランドの人名に馴染みがなくて、ルーナルって妖精みたいな名前なのに汚い元汚職警官だったり、過去にレイプ事件で自殺した被害者の姉がエーリンと同じく妖精名だったりで、えっとそいつはどの妖精だっけ?と結構名前がこんがらがる。ホルベルク、エットリデ、グレータルなんて3人組の悪党どもの名前もオペラの登場人物のようで悪そうに聞こえない。いや、それ以前に覚えられないというね。
3人でつるんでるシーンや、悪事の回想シーンでもあればキャラ付けできたんだけどさ。もっとうまく展開できないかねとモヤモヤした。
 劇伴がグレゴリオ聖歌のような男声ポリフォニーなのも変わってる。北欧ではこれが馴染んでるのかもしれんが、ぼくには浮いて聞こえた。
 汚職刑事、札付き3人組のレイプ事件、病理と遺伝、そういった要素が謎を解く鍵となるのだが、後半で急に相関図の見通しがパーッと拓けるところがあって、ああ!そういうことかと納得できるんだけど、テンションはさほど上がらず。
 見終わった時の印象はミステリー小説を読んだ時の読後感だった。話はおもしろい。でも映画的なおもしろさが欠けてるように感じられた。それは米国映画の語り口に慣れ過ぎてるせいなのかもしれないけど。北欧映画ファンには問題なく受け入れられるのかもしれない。
 もう一度見ると印象は変わりそうだが、これをまた観るのはしんどいな。
なべ

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