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アメイジング・スパイダーマン2のtorakoaのレビュー・感想・評価

4.2
随分ハリウッド大作ナイズされてしまったな、というのが序盤の印象。FOXサーチライトあたりな感じは画的にはほぼなくなり、大作映画らしくなってる。音楽うるさい。音量大きい、主張が強い。スローモーション増えた。止まってる中をカメラだけが動く場面はもっと短縮してほしかったなー。
前作から引き続いてる良いところも勿論たくさんあるが、臭みが増えたことで良さが2割減に感じさせられるような残念さがあった。

それでもテンポの良さセンスの良さで集中力切らさず観れたあたり、この監督の力量だろう。
かわいいんだよこのスパイダーマン。凄いフランクに喋るしユーモアあるし、言動に愛嬌あってじわじわテンション盛り返してった。いい具合の抜け感というか程よい脱力感が愛しい。笑いの入れ方さらっとしてるし。放水活動してるとことか、背後で壁にぶつかりながら登場するとことか、あちこちで笑った。スパイダーマンとしてのあなたも好きだけど私が愛してるのはピーターなのよってなヒロインの台詞の説得力にもなってる。どっちも愛嬌あって愛しいもの。

演者の演技力もあってのことだけど、身近にいそうな親しみが持てる人物になってて感情移入し易くなってる。ちょっとしたことを積み重ねていくことで魅力を感じさせようとする姿勢が素晴らしい。登場人物を血の通った生身の人間として描いて見せることはとても難しい。と理解しているゆえに、できる限り不自然さや強引さのないように熟考し作り上げているのだろう。物語り方の地力が高い。ご都合感がない訳ではないが、都合よく安易に動かしてるようにはしない、で徹底してるように見受けられる。
主人公だから・ヒーローorヒロインだから観客は好きなはず・好きになるはず、とどこかで高を括って人物造形おざなりにしてるみたいな作品もある中、そういうのに甘えない真摯な姿勢が感じられるのは物凄く好感持てるし心地良い。
言葉で説明するとどうしても大袈裟な感じになってしまうので、話半分ぐらいに受け取って貰えればちょうどいいかと思う。

エマ・ストーンは主に『アロハ』で苦手になっていたが、アメイジングにおける彼女は愛嬌がある。多分、アンドリュー・ガーフィールドとのケミストリーとやらが凄いんだと思う。二人のやり取り、空気感に愛嬌があってかわいい。身近にいたら、しょうがないなあバカップルめw などと思いながら眺めていたくなりそうな感じ。すごい相乗効果出てる。二人にヴィジュアル面での魅力を私は特に感じないのだが、そういうのなしで愛すべき人物でもっと観たいと思わせるよう作り上げてることは心から凄いと思うし、アメイジングがこの二人をキャストに迎えられたことは本当に幸せだったと思う。

前回いなかった親友ハリーが後付け設定ながら前作と繋げてある感じ、なるほどーと思った。ピーターが閉じた感じになってたのは多分唯一の友ハリーがいなくなったことも関係していて、ハリーは父から捨てられたという思い+友と離されたことで愛憎がより強まり歪んだであろうことを想起させる。長年会ってないから距離があってぎこちなく、「親友」として不完全な状態ゆえに、その後の展開の違和感が薄い。と私は思った。孤立無援と感じ死も迫る中、親しみを感じ心を開けるのはピーターしかおらず、他に縋れるものがないのに、という。今作のハリーの行動原理はかなり考えられてるなと思う。好悪はともかく、ずっと近くにいた親友が父の仇という理由で殺そうとまで思い敵対するよりはまだわかる。

デイン・デハーンは初見だった『欲望のバージニア』でも良かったので覚えてたんだが巧いなー。そして吹替が石田彰というどハマリ感。このキャスティングした人、思いついた時これしかないだろ俺天才ぐらい思ってテンション上がったんじゃなかろうか。
画策してるオズコープ社の人よかった。多分MCUにも出てた人。
クリス・クーパー少ない出番でさすがだった。
ライノの人とマッドサイエンティストみたいな人とマックスの上司の人は何か漫画じみた感じで浮いてたと思う。コントっぽい演技がちょっと鼻についた。
ジェイミー・フォックスは観る度私の中でちびりちびりと株が下がっていってる気がする。もっとできるだろうと毎度思ってるような。彼の役の言動というか思考が腑に落ちなかった。

先に『ノーウェイホーム』を観たので盛大なネタバレ食らってたのだが。
人物造形、ストーリーテリング、ユーモア、テンポ等のセンスはスパイダーマン映画の中でアメイジングが突出してる。その功罪。観客が好感や愛着持てるように紡いできてたからこそきつい。そこに登場人物に対する制作陣の愛を感じたし、主人公が負った傷の深さが伝わる。重い。
終盤。あー、このスパイダーマンに助けられた人は彼から勇気を貰うんだな、前作もそうだった。身近なヒーローゆえに、自分も彼のように街のためになることをしようと思えてくるのかもしれないな。と思ったところでご都合感とかは吹っ飛んだ。こういうところでも親しみを持てる身近なヒーローとして描こうとしたんだろうなと。ちょっとしたことだけど、前三部作にもMCUにもなかったアプローチ、「親愛なる隣人」表現ではないかと思う。
勇気を貰うことが必ずしもプラスになる訳ではないけれど、後悔はないのかもしれない。覚悟を持って挑んだ自分に誇りを持って逝けるのかもしれないな。と思い、モヤモヤが昇華された感じ。本当に丁寧に描こうとしてる制作陣だなと嬉しくなり、鑑賞後は意外と清々しい気分だった。
単に「原作がそうだから」ではなく、単なる試練としてでもなく、生きた人物を描こうとしてる感じであの展開に納得したし、顔を上げ前に進もうとする姿に涙腺緩んだ。「それでも生きていく」ということ。立ち上がる彼をかの人も目を細め見守っているだろうと思わされた。こういう「強さ」を身近な人のこととして親身に感じられるように描写したのは素晴らしい。アメイジングは良作だと思う。

電気を操る悪役が出る作品だからだろうけど、シンセの音や打込み系が苦手なので今回の音楽はかなりキツかった。この手の音楽てやたらな重低音で無駄に内蔵に響くから具合悪くなってしまった。ハンス・ジマーだそうで。あらまー。
『静かな湖畔の森の影から』が使われてて不思議に思ったが『Itsy Bitsy Spider』という曲だったっぽい(前半のメロディが『静かな湖畔』と同じ)。三部作一作目でウィレムが歌ってたのもこれだったのかなと思ったらそうだった。
『グノシエンヌ』モチーフっぽい曲は敢えてなのかなー。

レンタル版は本編のみ。吹替、英語字幕入。

未公開シーンに入っていたフラッシュとのやり取りは削らないでほしかったな。
なくても構わないのは確かなんだけど、誰とも馴染まず閉じていたピーターがグウェンとつき合って変わったこと、それによりフラッシュもいい影響を受けたこと、ピーターにとって彼女の存在の大きさがより感じられるエピソードだったと思うので。
ハリーが自分の姿を恥じるところもちょこっとでいいからあったほうがよかったな。
マックスと母の場面は、あると彼の境遇が伝わって良かったと思うけど、母親はどうなったんだとか余計なことが気になるから削って正解だった。
父との場面は違和感と齟齬が出すぎるから削って大正解だが、そこのガーフィールドくんの演技は素晴らしかった。
素晴らしい俳優の演技を堪能できたし、コンプリートBOX購入しておいて良かったと心から思う。
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