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小さいおうちのtjZeroのレビュー・感想・評価

小さいおうち(2013年製作の映画)
3.4
昭和10年代、都内の坂の上に建つ、赤い屋根の洋館に奉公した女中タキ(黒木華)の回想記。

『この世界の片隅に』などと同じく、ある一軒の家を中心にして”定点観測”のようにして、戦争へと突入していく世の中を描いていく間接話法。

平行して、夫人の時子(松たか子)と夫の部下・板倉(吉岡秀隆)との秘めた恋を描く構成も、スリリングでうまくいっている。
時子の「はじまったものは、いつか終わるのよ」という、戦争と己の恋と、どちらにも当てはまるセリフが印象的。

現代劇だと「古くさいなあ」と感じることもある山田洋次監督の演出も、こういう題材だとピッタリはまって、落ち着きと見応えがある。

ただひとつ、自分が山田作品でちょっと苦手に感じるのは、”観客よりも登場人物が先に泣いてしまう”ところ。
①悲しい出来事があって、②登場人物が涙をこらえて、③観客がもらい泣きする…という手順を踏んでもらうとこちらも気持よく涙を流せるんだけど、山田作の場合、②の段階で登場人物がけっこう派手に泣いてしまうので、観ている方はちょっと冷めてしまって、”泣かせてくれない”ことがある。

日常生活でもあるでしょう。目の前の相手に先に号泣されてしまうと、こちらは我に返ってなんか泣けなくなっちゃう…っていうこと。
山田作品を観る時もそんな状態になりがちなんですよ、自分は(←少数派なのかなあ?)。
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