踊る猫

父の秘密の踊る猫のレビュー・感想・評価

父の秘密(2012年製作の映画)
3.7
さほど期待をしないで観たのだけれど(失礼!)、全体的に漂うミヒャエル・ハネケ臭がなかなかクセになる。娘が虐められて父親が復讐するという、それだけと言えばそれだけの話で陰惨ないじめが生々しく描かれるあたり、かなりこちらを良い意味でげんなりさせるものがある。監督が人間の悪意を知り抜いていることの証だろう。逆に言えばハネケとは異なるテイストがもう少しなにかあれば……と思ってしまったのも確か。安直に BGM に頼らず、扇情的なカメラワークを排して長回しや台詞回しの静けさの迫力で持って行くあたり、強者と思った次第。程良い謎の残し方、余韻の残し方もハネケ的であり、悪く言えばそこから抜け出せていない印象を抱く。監督自身はハネケを意識して撮ったわけではないのかもしれないが……そのあたり、インタヴューを読んでみたい。侮れない映画監督をまたひとり知ってしまったようだ。
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