あなぐらむ

女地獄 森は濡れたのあなぐらむのレビュー・感想・評価

女地獄 森は濡れた(1973年製作の映画)
4.3
月刊シナリオのバックナンバーで脚本は読んではいたが、これは凄い。
もっとモダンになるかと思ったら、大正-昭和初期的な和洋の折衷具合が絶妙。
艶歌やお拍子と洋的暴力のアンサンブル、屋敷に紛れ込む伊佐山ひろ子以外全員キチガイという、人の欲望のむき出し状態がこれでもかと続く。

セックス中の男を射殺してその硬直で感じてみせる中川梨絵狂気の名艶技。
メイド役を務める山科ゆりも魅力的。
名手・前田米造のセット内移動撮影が見事に決まり緊迫感が途切れない。

死後硬直した男たちの死体の上で行われる宴、けいれんする身体。
寧ろ優雅なる死体遊びをしてみせたのはクマさんだったという皮肉。
神代自身による脚本ではあるが、彼の作歴からも異色な事を考えると、反権力をはっきり志向していると思われる。
およそ性と暴力の限りが描かれ、力無き者(映画作者側)が自由に創作して何が悪いのか、と宣言するかのようだ(ロマンポルノ裁判係争中)。
最後がラジオ体操なのはなんと、中川梨絵さんの案。この人も奇天烈な人。ご本人とお話した事があるが、映画のまんまなのが凄いと思った。