えいがうるふ

her/世界でひとつの彼女のえいがうるふのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
3.3
すごく綺麗な映像が続くが、何だか最初から哀しい予感がずっと付きまとう映画だった。
AIとの疑似恋愛は今の時代ならSFほど遠い話でもなく割とすんなり設定を受け入れられた。実際、ネット上で出会った生身の人間二人が実際に会うことなく関係を深めて恋人になれば、声だけで愛を確かめ合うこともあるだろう。あれで満足できるなら遠恋も外出自粛生活も怖くない。
ただ、主人公のオフィスも自宅もやたら洗練され徹底的に生活感が排除された空間で、完全にバーチャルな恋愛を素敵に見せるには結局リアルの生活の素敵さで補完する必要があるのかもと思った。同じような関係を描いてもこれが1K安アパートの万年床の上なら哀愁を通り越して陰鬱な絵になってしまうだろう。

AI人格がどんどん進化していった先にどうなったか、は非常に腑に落ちた。人間はそう簡単に進化しないからこそ、時に狂ったり馬鹿になって短い人生を謳歌することもできるのだろう。
恋愛=社会的に受容された狂気という定義は秀逸。

ところで自分は自分の考えをまとめるのに言葉を文章にして書き出す作業がどうしても必要なたちで、今でも文字を入力する手間と時間のかかるチャットやメールの方が圧倒的に楽で、電話は苦手。だから音声入力だけですらすらと名文の手紙を代筆できる主人公をすごく羨ましく思った。そんな彼だからこそ声だけのやりとりでAIと深い関係を築けたのねぇ、と納得。

あと、膝カックンて外国人もするんだ、という地味な発見(笑)