Nasagi

ロスト・ボディのNasagiのネタバレレビュー・内容・結末

ロスト・ボディ(2012年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

イタズラ好きな妻が仕掛けたゲームでも、第三者による恐喝でも、ましてやお化けホラーでもなく、まさかの警部による復讐劇。「主人公」と「ジャンル」のミスリードがうまいのかなと思います。

最初に主人公っぽく出てくるのはハイメ警部ですが、その後で不倫と妻殺しという「秘密の共有」をさせられたことでアレックスに主人公が移り、そこから観客はアレックス視点で物語についていくことになります。
じっさい、この映画の表向きの主人公は間違いなくアレックスであり、
「彼の悪事がいかにバレないか」と「彼相手に仕掛けられた「ゲーム」の真相はいったいなにか」というサスペンスこそが物語を引っ張り、観客をハラハラさせる主軸です。他には死体安置所という舞台設定を活かしたホラー演出も随所に見られますが、これはガチのミスリード要素というよりは、映画に加えられたひとつのエッセンスぐらいに捉えられるでしょうか。

そうやって「アレックスを主人公としたサスペンス」として見せながらも、最後の場面では「じつはハイメ警部(親子)の復讐劇でした」と明かされることで、物語は最終的にハイメ警部主体に回収されます。ここは警部役のホセ・コロナドのニ重の意味で「迫真の演技」も相まって自分なんか見事にだまされてしまいました。残り30分ぐらいでカルラがどうやらハニトラだったっぽいとわかってもなお「え〜、じゃあマイカの仕事上の敵とかが黒幕なんかな〜」とか呑気に思っていたぐらいなので、これからはもう少し疑いをもって登場人物を見るようにしたいです。「悪人」であるアレックスとは対照的に警部が感情移入しやすい「善人」として強調されているのはうまい点ですが、観客としては疑うべきポイントなのかもしれません。

見返してみると最初に警部が出てくるシーンで家族写真が映し出されて、正念場を前に静かに支度するとこなんかまさに復讐劇のオープニングだと言えます。
極めつけは警部がはじめてアレックスに会ったときの会話で、「個人的な怨恨による犯行だと思われます」と。

「注意深く見ると序盤ですでに作品の本質について語られている」というのは、この手のどんでん返しモノで「良作」によく見られる特徴ですが、本作もそれを実践しているんじゃないでしょうか。
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