むぎちゃ

インターステラーのむぎちゃのレビュー・感想・評価

インターステラー(2014年製作の映画)
4.8
アストロノートは永遠に。


偉大なる某漫画家曰く、SFとは「少し不思議」の略だそうな。お洒落だね。

未だ人類が宇宙へ飛び立つはるか前から、映画ではその「少し不思議」を描いてきた。
月世界旅行では大砲で月へ飛び、2001年宇宙の旅では磁力靴で浮遊するペンを捕らえた。

時代は移り変わり、宇宙へ飛び立つことはもはや「少し不思議」な世の中ではなくなった。それでもあの手この手で時代の天才たちはSF映画を作り続けた。

或いは彼方の銀河で光る刃を振るい、或いは寄生した地球外生命体が腹を食い破り、或いは無重力の恐怖と生きる事の重さを描いた。

ノーランは何をもってSFを描いたのか。
タイトル通り星間飛行?ワームホール?ウラシマ効果?けどどれもが実際の科学によって検証されている事象だ。
ノーランが描いた「少し不思議」は「愛の力」。
なんて照れくさくてロマンチックなんでしょ。

内腑を抉るような映像美も、終盤一気にちりとりで掻き集めるが如く伏線を回収しまくった妙技も、全ては人類が生み出したわけではない不思議な力を魅せるための助力に過ぎなかった。
逆に言えばあそこまで科学的考証を突き詰めたからこそ、愛の力が浮き彫りになったのかもしれない。
やっぱりなんてロマンチックなんでしょ。

良くも悪くも近年は機械的なインテリジェンスさが目立つノーラン監督の映画にあって、高位高次元の存在がもたらす希望へのヒントが愛とは、やっぱりなんて照れくさいんでしょ。

荒廃した地球、緩やかに死を待つ人類。
命を賭してのミッション。
そして、本棚の幽霊は存在するのか?
描かれる全てが見事に結末へ向けて収束する。

とはいえ、本作が2001年に大きく寄せているのは観ていて分かるレベル。
初見時の感想は、「俺(ノーラン)だったら2001年はこう作るね、って作品なのかな」と思ったほどだ。
謎の存在に導かれ宇宙へ旅立つ起点、おしゃべりなAI、そして土星。
ちなみに小説版の2001年ではモノリスの他にちゃんと高次元の知的生命体の存在が描かれている。そう、本棚の裏側を作った彼らのような存在だ。
もはや関係ないが小説版は終盤かなりアクロバティックな展開で、映画版と大きくかけ離れた面白さがあるのでおすすめ。

ここまで褒めちぎってきたけど、気になる点のひとつがマーフとのお別れシーン。
亡きママが言ってたってセリフ、あそこはさすがにクドいかなぁ…。不自然なほど幽霊推しすぎってなっちゃう。

…ということで何とかして満点評価を防いだぜ。
いや別に満点で何が悪いって話なんだけどさ。


最後に映画館鑑賞のお話。
公開時とBlu-rayで何度か観ているが、レーザーIMAXで本作を観るのは初めてだった。
フルサイズで描写される宇宙空間は本当に息を飲む美しさと恐ろしさだ。
けどそれ故にやっぱり気になっちゃうのがフルサイズとビスタサイズの差。
表現が難しいけど、急に画面の上下に黒い帯が出てくると『映画のパロディ映像』みたいに感じちゃうんだよね…。私だけっすか。
むぎちゃ

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