mimitakoyaki

物語る私たちのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

物語る私たち(2012年製作の映画)
4.0
11歳の時にガンで母を亡くし、その後、自分だけ父親に似ていないと、家族からからかわれていたサラ・ポーリーが、母ダイアンの在りし日の記憶を辿りながら、自身の出生と家族の秘密をさぐるドキュメンタリーです。

自分は父親の子ではなく、本当の父親は別の人、とか、
母親が浮気して…とか、そういう事を、子どもの立場からは考えたくない事だと思うんですね。
自分の両親を男と女として見たくない、あくまでお父さん、お母さんであって欲しい感覚、そこを乗り越え、一人の女性としての母ダイアンの生き方を精一杯受け止めようとした映画なのかなと思いました。

明るくてエネルギッシュで奔放、可愛らしくてほっとけない、誰からも愛されていた母であり女優であったダイアンについて、家族や友人やかつての共演者が語る思い出と、昔撮った8ミリフィルムの映像によって、コラージュのように鮮やかにダイアンの人となりが浮かび上がります。

みんなを魅了したダイアンの明るさの奥にあった母親としての悲しみや寂しさを知ったり、夫婦の倦怠期に他の男性と関係を持ち、妊娠してからの母の苦悩と決意など、関係者からの話によってダイアンについて多面的に捉えながら、知られざる母の内面に迫っていきます。

サラが自分だけ父親が違うことや、本当の父親が誰かを知り、自身の出生の真実をどのように受け入れたのか、またそれまでの戸惑いや葛藤はどんなだったかは、サラ自身が言葉で語ることはあまりないのですが、父マイケルが真実を知ってからのポジティブさがとにかくすごいんです。

情熱的でいつも刺激を求めたダイアンの性格もよく分かってるし、自分は退屈に思われてる、だけどそんなダイアンをやはり愛していたし、何と言っても、サラの事をダイアンが亡くなってからも一生懸命大切に育ててきた、その揺るぎない愛を感じました。

誰よりも愛してる娘が、実は自分の子ではなかったという真実を知ってからも、その運命を受け入れて、今もサラを愛し続けるお父さんの度量の大きさ、絆の強さを思います。

映像に関しては、途中、おや?と思うところがいくつかあり、例えば、ダイアンのお葬式の映像にサラの実の父が映っていたり、ダイアンとその男性との映像など、なんでこんな映像があるの?誰が撮ったの?いくらダイアンとマイケルが俳優だったとはいえ、素材多すぎるよね?と不思議に思ってたら、昔の実際の8ミリ映像と加えて、再現ドラマ的に俳優に演じさせて撮った映像もあることがエンドクレジットでわかりました。

関係者へのインタビューだけでは映画としては退屈してくるので、実際の映像と再現映像を巧みに合わせながら見やすくしてありました。

最後にはちょっとしたオチもあって、もうダイアンって…となりますが、物語りを紡ぐことで、その人の生き様や人となりを鮮やかに浮かび上がらせ、またその行為によって、過去を受け入れ、前を向いて生きていける、そんなことを感じました。

【15-29】
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