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そこのみにて光輝くのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.2
公開時から気になってたのですが、どうにもヘビーな話みたいなので、体調不良をきたしそうでよう見なかった本作、しかし、「コウノドリ」で産婦人科医を演じた綾野剛がドンピシャで、綾野剛をもっと見たくなったので、ついにこの作品を見ることにしました。

いやいや、こんなどん詰まりあるかな、生き地獄の人生ですよ。
貧困、介護、過去のトラウマや犯罪に縛られ、逃れられない最底辺の人生。
美しい海や大地、煌びやかな街という北海道のイメージとは程遠く、人気のない寂しい浜辺に建つボロボロのバラックや、昭和から取り残されたような場末の飲み屋、タバコの煙と騒音のパチンコ屋が彼らの世界なんですよね。

それぞれに抱えてるものが大きすぎて、明るい明日なんか想像できずに、諦めたり現実逃避したりしてるんだけど、特に池脇千鶴演じる千夏が痛々しくて見ているのが辛かったです。

貧しさから体を売ったり、町の有力者で弟の世話もしている男の愛人をしてたり、父親の「介護」もあって、一手に家族を支えている彼女だけど、普通なら、福祉を利用するとか他にやりようもあると思うんですね。
だけど、そういう解決の仕方を知らないかできなくて、雁字搦めになりながらもただ自分を諦め捨てるようにして淡々とこなしていく。

そんなどうしようもなく絶望的な千夏のすべてを知った上で愛する達夫もまた、彼女の存在によって自分を立ち直らせ、前を向けるようになったことが、微かな救いでした。

千夏にすれば、自分の闇も含めて全てを丸ごと受け入れてくれた達夫の存在は、こんな閉塞と絶望の日々の中での唯一の生きる希望であり、ラストの眩しい光に照らされた2人の幸せを願わずにはおれません。

あとはタクジを演じたオニちゃん 菅田将暉が愛すべきバカで素晴らしかったです。
どんよりとダウナーな物語の中で、カラッと明るく笑わせてくれて、育ちは悪く学もないが優しくて人懐っこく憎めないいいヤツだから、終盤の展開が余計に切なかったです。

社会から置き去りにされたような、底に生きる不器用な人たち、そこでも愛に支えられながら、もがきながら生きていく3人が愛おしかったです。
本当に素晴らしい見ごたえのある大人の作品でした。

4
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