まりぃくりすてぃ

花咲くころのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

花咲くころ(2013年製作の映画)
5.0
まともな映画。
ここに描かれてる不穏の連鎖は、“さりげないふうに受け入れてしまえる日常”だったのかもしれないが、当時14才の少女たちにはやっぱり底なしに重い。
私まで、どう生きていったらいいのかわからなくなる。
ある黒い小道具の、移動移動の果ての結末は………すべてを変えうるけど。

“低いもの”に惑わされない一本気なエカ。さらなる直情型だが現実主義者の素質も持つナティア。気持ちが揃わなきゃ揃わないでこの親友二人組(互いに友達思い)は、押したり引いたりしながらもピタッと鏡の関係に。
主役エカと同じ精神性のまま、私だって19才ぐらいから時間が止まってる部分はある。
(視覚上の装飾少なく、台詞もムダを削ぎ落として全体マジメである上に)劇伴がほとんどないだけに、ピアノ合唱シーンで唐突に私はちょっとだけ泣きそうになった。室内に居並ぶ女子生徒たち(全員黒髪)は、モデルオーディション控え室みたく眩い図だったりもした。
そして婚礼でのエカの妙に硬い、愛想欠落の舞踊にこそ、大きな秘密があった。彼女は迎合でも祝福オンリーでもなく抗議のために男踊りを踊ったんだって!
たった一発張り手か何かをくらっただけで目許のアザがきちんと長引く。ボコボコ後に絆創膏一つでごまかすイイカゲンな暴力映画が大半である中、真にまともだ、これ。

世界がこういう作品とまっすぐ向き合わなければ、映画は育たない。人類も育たない。と思う。
ポーランドの古典『灰とダイヤモンド』の時もそうだったのだが、観ていたあいだよりも、観おわって30分ぐらいしてからの方が涙がはっきりジワジワ湧いてきた。
長時間、パンフを読みながら泣きっぱなした。
エカが提示してくれたテーマのためなら、私死ねるかもしれない。