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イーダの一のレビュー・感想・評価

イーダ(2013年製作の映画)
4.4
ポーランドの名匠 パヴェウ・パヴリコフスキ監督作品

歴史の波に翻弄された戦後ポーランドを背景に、若い修道女が出生の秘密をたどる旅を描く

ポーランド映画初となるアカデミー外国語映画賞を受賞した作品でもあります

開始5秒で傑作を確信
マジで非の打ち所がない
ずっと観たかったレンタル対応すらしていない作品がWOWOWで観られる事に感動したのもつかの間、これはどえらい映画ですわ…

修道院で孤児として育てられた少女イーダの健気な姿が激しく胸を打つ
女二人の重すぎるロードムービーともとれますが、上品かつ叙情的なセンスの塊のような映像詩

これほど卓越された異次元の映像美は『ニーチェの馬』や『異端の鳥』を観たとき以来の衝撃

とにかくモノクロ映像が桁違いに美しく、それだけでも十二分に観る価値がある映画です

スタンダードサイズで余白を上手く利用しながらビシッと決まった完璧な構図のオンパレード
光と影を効果的に使う研ぎ澄まされた端正な映像とは裏腹に、胸にズシンとくるほど非常に重たい作品となっており、淡々と描かれてはいますがかなり強烈な物語

ホロコーストやユダヤ人の扱いなどの歴史的背景を知った上で観ると更にキツいものがありますが、当然説明的な描写はなく、最小限に抑えられたセリフ量でも画面からひしひしと感情が伝わってくる

静かに聞こえる生活音や自然音すら心地良く、時折流れるクラシックな音楽も最高にムードを生んでくれる
そしてイーダの踏み出した一歩と共にようやく動き出すカメラワークに鳥肌

苦しくてもすべてを描き尽くすことはせず、観客それぞれに委ねるような静謐さを持つストーリー
僅か80分しかありませんが倍以上あっても全然観られる

立て続けに洗練された素晴らしい作品を観ているので感覚が麻痺してしまいそうですが、本作も間違いなく映画史に残るレベルの傑作
理屈はいらないのでWOWOWに入っている方は観ないと損かと

〈 Rotten Tomatoes 🍅96% 🍿79% 〉
〈 IMDb 7.4 / Metascore 91 / Letterboxd 3.9 〉

2021 自宅鑑賞 No.227 WOWOW
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