"下品こそ この世の花"を矜持に、映倫もブッ飛ばすほどの痛快な艶笑風刺劇で徳川セックス百態を描いたコーブンこと鈴木則文による脚本/監督作。共同脚本に掛札昌裕。
決して大河ドラマでは描けないド下ネタ満載な部分を大人たちが揃いも揃って大真面目にやっているのが微笑ましく嬉しくもある。これが映画作りのオモシロサではないだろうか?作ってる人たちも楽しんでる様子が目に浮かぶ。
武道に励み、女人を忌み嫌っていた34歳の童貞大名である九州唐島藩城主の小倉忠輝(名和宏)。
30歳まで童貞だと魔法が使えるので、この小倉忠輝は早々に天下統一できただろうに…
時の天下大将軍である徳川家斎の34番目の娘である清姫(杉本美樹)の嫁ぎ先として童貞大名に決定が下る。
姫様が降嫁するときの行列シーンも、かなりの人数のエキストラを使っている。向こうの遠くまで行列を成している。こういう細部にお金をかけるところが素晴らしい。徳川セックス百態の映画だということを知って出てるのかしら?大真面目な時代劇だと聞かされてないか?キチンと知った上で出てるとあらば、よりエキストラさんたちは素晴らしい貢献者である。
時代劇では日が当たることが絶対にないセックスの部分を当たり前に大真面目に描くことによって、ただのエロ映画という範囲を越えて、より歴史的理解になるというか…人間から性を切り離すことなんてできないのだから、それを時代物で正面から描くことで、よりリアルにその時代を感じることができる。
とにかくものすごい新鮮である。
○一室
童貞大名と清姫の初夜のあと。
殿山泰司を演じる小倉忠輝の家老米津勘兵衛。
勘兵衛
「殿!ご首尾は?」
童貞大名
「いやーダメじゃ!」
勘兵衛
「だめ?なんという情けない!目標を十分お確かめなされましたか?」
童貞大名
「なにぶん草深きところゆえな、どこがどうなってるのかわからんのじゃ!今宵はこれにて打ち止め!」
草深きところ…ふふふ。昔の人は女性のアソコを何と表現していたのか?草深きところは有り得そうだ。いいとこついている。
『温泉みみず芸者』で池玲子と共に映画デビューを飾った杉本美樹であったが、池玲子には作品ごとに水をあけられることに…。
しかし、本作の清姫役に出演予定であった池が突然の歌手転向宣言を行い東映との関係が悪化。それにより本作の代役主演に急遽抜擢される。
鈴木則文監督は脇役陣の中から渡辺やよいの代役起用を強く推したようだが、他のスタッフから強く説得されて折れたようだ。
杉本美樹の起用は正解だったと感じる。顔立ちが今っぽくなくて雰囲気出てる。
太鼓の音に合わせてチンコを出し入れするという勘兵衛の発案で、不器用なりにも童貞を喪失する忠輝。そして処女であった清姫も処女喪失。
○一室
葵の紋が入った和紙に血がついている。これは処女喪失の時の血ということのよう…それを神饌かのように扱い、三方に載せている。
姫の教育係・藤浪(三原葉子)
「めでたくお契りあそばされました。お改めくださいまし」
と、三方を役人たちに回す。
桑原
「確かに。上様はじめ御台所、ご老中の方々にしかとご報告つかまつる」
と桑原、血のついた和紙をさらにお重に入れて厳重に保管する。
なにこれ?これは創作?実際に保管してたの?作り話?こんなの実際にあったら滅茶苦茶おもしれぇけどなぁ…処女喪失展とかいって開催してくれないかなぁ…
○姫の間
勘兵衛
「姫!無事、和合安泰お祝い申し上げます」
藤浪
「そのような言葉、姫にお伝えするのは、まだ早すぎるのではないかの?」
勘兵衛
「なんと!」
藤浪
「姫は味気ないと申しておられる。(中略)作法もわきまえず丸太のようなものを無理矢理姫に押し付けるなぞ言語道断じゃ!反省がない限り、今後一切おしとねは辞退させてもらいますぞ」
処女喪失して【和合安泰】のお祝いを申し上げるのっていいね!もう死語になってしまっているのが勿体ない。
御褥(おしとね)ってのもまたいい!
江戸時代は【御褥すべり】というものが制度化されていたようだ。
何も知らなかったピュア童貞だった殿様が、遂に性に目覚める。盛りのついた犬猫のようにヤリまくる。
こんなに気持ちの良いことを、下々でさえやってると知り嫉妬に狂いだす。今までの性のない生活を取り返すべく立ち上がる。
水戸黄門かの如く、市井の人々に紛れ性の市場調査を隠密で始める。
忠輝
「世は城下を視察して参る!」
なんだこれ?!いまだかつてこんな設定の殿様なんかいたか?最高だろ!殿様自ら隠密でセックスの市場調査って…
視察から帰る殿。
殿
「下々の者は、遊楽のちまたにおなごを抱き、野合の交わりさえいたしておる。藩主たる予がなぜ下々のむさぼる快楽さえ許されんのじゃ!藩主として命令する!今後一切、男女の交わりを禁止いたすぞ!藩内、あらゆる男女の営みを禁止する。このような法令は徳川では思いつくまい(笑)」
嫉妬に狂う殿。最高権力者の横暴が始まる。
童貞がモテる男を僻むのと変わらない。
なんだこれ?最高だろ!
ナレーション
「忠輝の内部に、下賤の者が長い間、自分の知らざる快楽を貪っていたことへの嫉妬が、どす黒く吹き上げていた。権力者は性の快楽においても権力者でなければならない」
ケイボウ
閨房禁止令
法令175条
すべてのチンコに印鑑を押す。
役人
「この印が消えているかいないか、明朝、登城の際に調べる。もし、消えていたら男女の交わりを行ったものとして、厳罰を受けることになる」
セックスしなくても消えちまうよ。
お風呂でも消えちゃう。
Sandra Julien演じるフランス人の娼婦サンドラ。美しいし、おっぱいもきれいだけど…アイラインのひき方が…特に目の下のアイラインが異様に太い。しかも目の際ではなく、涙袋にガッツリ入れている。
○一室
清姫、手鏡を床に置き自分のアソコを見ている。
お艶(衣麻遼子)
「よーくご覧ください。栗のいがが開ききったようなところがございますね」
清姫
「ほんに栗のいがそっくじゃ」
お艶
「しかしそれは、栗ではございません。栗鳥と申す、鳥類の巣でございます」
清姫
「なに?くりとりのす?」
お艶
「そうでございます。栗鳥の巣は、ちょうど、栗のいがのように作られていて、中では雛が餌がくるのを待っているのでございます」
清姫
「わらわには、雛は一向に見えぬが…」
お艶
「お待ち下さい。雛が首を出すには餌をやらねばなりません」
清姫の身体を筆の毛で愛撫するお艶。
ガッハッハ…栗鳥の巣?!
なんだこのバカバカしさは…最高だろ!
○切腹
梢(池島ルリ子)と旦那(成瀬正孝)が閨房禁止令を破り梢の切腹を命じられる。
そして旦那には介錯をしろ!と…
白装束で、前をはだけブルンと綺麗なおっぱいを披露する梢。
短刀を腹に刺すのだが…え?!これホントに刺してない?どうやってんの?ちゃんと血が…出てきてるんだけど…マジでわからない…おっぱいも本人のが見えるし、お腹に細工してる様子もないし…なんだこれ?
なかなか介錯できない…。
後ろからの俯瞰ショットになり、首がブルンと飛ぶ!美しい。
○城下町
やらせろ!させろ!と、どデカイチンコの模型を作って、一揆をする民、百姓。閨房を廃止しろ!と…。
一揆対策として、豚を用意する勘兵衛。
勘兵衛
「ピッグと申す獣を愛玩具として支給することじゃ…この獣の持ち物は、おなごのソレにそっくりなそうじゃ」
サンドラが崖から飛び降りようとするところを、梢の旦那である森田勝馬が止める。
全く良くワカラナイ御託を並べてサンドラと交わる。それを受けるサンドラも理解できない。
性行為がバレ、波打ち際で逆十字で磔にされるサンドラ。波が打ち寄せる度に顔が浸かり息ができない。こういうところはヤケにマジなのも面白いバランス。
寵愛するサンドラを失い…遂に175条が解禁される。一斉にヤリだす民。最高すぎる。
文政七年
甲申10月
小倉忠輝 没す
病名
急性腎虚 腹上死
翌年 城下にて生まれし子ら
2467名を数う
平年の8倍に及ぶと、古書にあり
世は全て 事もなし
字幕
「あらゆる生命の根源たる性を支配し管理検閲する事は 何人にも許されない
例え 神の名においても」
完