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パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊のTEPPEIのレビュー・感想・評価

1.4
日本での「パイレーツ」シリーズの人気ぶりはアメリカはじめ海外からも驚きらしい。第1作目はまさに伝説といえる作品に仕上がっている。海賊映画は当たらないという風潮をユニークで魅力的なジョニー・デップ演じるジャック・スパロウと印象的なスコアは今日でも愛されている。そんな大人気シリーズの最新作は相変わらず海外では人気なものの、本国アメリカではやや飽きられている。そもそもジョニー・デップのスキャンダルがアメリカの場合はそのまま作品にも結びつかれたりしてしまうので気の毒ではある。6年ぶりの新作は旧キャストたちがカムバック。実にオーランド・ブルームとキーラ・ナイトレイは10年ぶりのシリーズ復活となる。
先に評価を言うと結構シビアである。むしろ前作よりは遙かに視覚的にもストーリーも見応えはあった。ストーリーは正直「勢い」そのものでこれまでのシリーズに蛇足、取って付けたような設定で溢れて結果詰め込んでしまった印象は拒めない。それだけならまだいいものの、ジャック・スパロウ船長のキャラが薄いの何の。歳を取ってパッとしていない印象とか、そういう設定があるのはいいものの、ジョニー・デップの熱演が勿体無い。元凶が全てジャックだったり、いまいち新キャラたちも表面的過ぎて結果すげえお祭り映画になっている。そんな楽しい雰囲気を全く否定する気は無かったが、終盤はもはや「パイレーツ」シリーズなのかと疑うほど別の映画である。やはり何となくシリーズの限界を感じてしまった。今回悪役となるサラザールを演じたハビエル・バルデムが史上最高に無駄遣いで海の死神とか伝説のスペイン人とか名ばかりで結構マヌケである。今回様々なジャックのアイテムが関わっていたものの、最後まで意味不明。意味不明だけど話が勢いで進んで進んで…。素晴らしかった点は視覚効果とシリーズ屈指の娯楽的な雰囲気が戻ってきたこと、さらに音楽。今回はハンス・ジマーではなく、「ローン・レンジャー」のジェフ・ザネリが務めておりアレンジの効いたいいスコアだった。そして本作を監督したヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドベリ。この両者の作品は見たことはない。「コン・ティキ」は名前は知っていたが、今回初めてこの2人の作品を見てややゲンナリした。いかにもフランチャイズにこだわった、またはありがちなスローモーションの多用と微妙なアップ。ちょっとセンスのない引き画が何となくミスマッチ。ロブ・マーシャルよりは「パイレーツ」を意識していた雰囲気ではあるものの、大作向きではない印象を受けた。「パイレーツ・オブ・カリビアン」としてはやはりもう少しキャラの引き立てや観たことないアクションを期待したかった。スケールはよくよく考えれば小さく、バルボッサ含む常連キャラクターが道具のようにお邪魔キャラにされているのも不憫。全体的に雰囲気は好きなのだが、それでも物足りない。
総評として「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」は第4作目で失ってしまったポップな要素を蘇らせているが、冒険心をくすぐられない設定と無理解な演出が目立ってしまっている。ちなみに邦題は完全に当たり触りのないタイトルなので別に最後の海賊ではない。今回のシリーズ最新作はしいていうなら「何か勝手に終わっていた」という状態だろうか。これぞパイレーツと言える要素が欲しいところであったが、劇場で観る迫力は保証できる。
ついでに字幕は戸田奈津子氏を下回り、シリーズで1番出来の悪い字幕翻訳だと思いました。渡邉貴子氏…もうちょっとキャラクター口調とか口語とか工夫できたのでは…。文字制限的に考えても無理解な訳が多い。作品との評価はもちろん別だが、あまりにも不親切だった印象。
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