レオピン

「エロ事師たち」より 人類学入門のレオピンのレビュー・感想・評価

4.4
人間の楽しみいうたら食うことと これや

若き小沢昭一は古谷実の漫画に出てきそうな顔をしておるな。稲中顔。
スブやんの名は酢豚からきているそうな。野坂昭如の原作では豚のようにでっぷりと太った男。彼の周りには多彩な愛すべきキャラクターがいっぱい控えているようだ。

昭和のエロには味がある。簡単インスタントじゃ決して手に入らない奥深い世界。ブルーフィルム 8mm機材で自分たちでエロ映画を制作する。それだけでも大変だがその鑑賞会や販売まで含めると相当な労力。旅館や裏社会にも顔がきき鼻が利く人間でないとできない。髪結いの亭主で気ままに暮らせたはずだが彼には使命感があった。

エロ事師たちが手広くやっていたようにエロビジネスの裾野は広い。今やTENGAやDMMのようにつき抜けた企業も出てきている。考えれば高齢化時代の有望産業なんだよな。

スブやんのたくましさには感心する。警察やヤクザにしめあげられ仲間の伴的にも裏切られ、なおかつ子どもたちの反乱に悩まされながらも腐らず飄々と己の道を歩む。最後までついてくるのはカボと呼ばれた女嫌いの青年だけ。仲間は一人か二人いればいいんやな。

会社や組織に頼らないで独立独歩自分の好きなことで食う。元祖YouTuber的な人間。何かによりかかって生きていくのは中々厳しい時代。彼はこれからのお手本かも。

低欲望時代などと言ってみても、生きてる限り離れられない欲ボー ボンノー。こいつがあるから生きているとも言える。少なくとも己の中にあるのだから正直に素直でありたいですわ。

手放すことが大事であると坊さんはよく言っている。仏教は宗教というよりも煩悩に振り回されず快適に生きるためのハック術のようなものだともいうが。

己の煩悩を見つめすぎるとスブやんみたいに最後EDになってしまうんじゃなかろうか(あの怪しげな精力剤のせいという説も)。彼は真面目人間をバカにしていたが人一倍に生真面目な男やった。

春さん亡き後、新たな目標としてダッチワイフにのめりこむ。あのハマりやすさ 凝り性 そういう意味で助平な人間。業が深い。何事につけあっさり あきらめ いさぎよさを良しとする癖に異様な凝り性も合わせ持つ。彼の住んでた住居みたく裏と表があって、なんともけったいな国だこと。

一等低い視座からずっと人間の業や欲を見つめ続けていた今平監督。今回はたまたまエロやったが青木雄二のナニワ金融道のようなのも観てみたかった。(あ 代わりにスコセッシがやってたのか)
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