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ベイマックスのHiiiraiiiのレビュー・感想・評価

ベイマックス(2014年製作の映画)
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2015.1.4 TOHOCINEMAS六本木

2006年よりディズニー・アニメーション・スタジオを統括しているジョン・ラセターが提唱する“Story is King.”(ストーリーこそ王)という製作哲学をこれでもかと発揮してる本作。

東京とサンフランシスコを合体させた架空の街【サンフランソウキョウ】を舞台に、オタク少年のヒロと亡き兄の残したゆるキャラ系ケアロボット、ベイマックスと仲間たちが冒険を繰り広げるSFファンタジー

老若男女だれもが心の中に染み渡る物語であり【兄弟愛・勇気・友情】の少年ジャンプ的要素を散りばめ少年が冒険を通して優しさと許しの意味を学ぶ成長物語。ディズニー映画の過去にあまり見られなかった男主人公という点は良い意味の意外性を感じた。

絶賛されている本作を大筋は認めつつもやはり物足りなさも感じる。ディズニー映画として見れば良質なフォーマットにはめ込んだ確実な80点映画であることは間違いないのだが悪側の描き方がやはり薄いなぁと。『アナと雪の女王』でも感じたがアナとエルサの葛藤は十二分に描かれているのに対して国の乗っ取りを画策するハンスが一面的な悪でしか描かれなかった事と同様に本作もダークサイドに堕ちたキャラハン教授の描き方に物足りなさを感じた。その、善の為だけにしかない悪の存在は善を引き立てるものとしての効果は薄く物語を通して見た時に巨大な感動は得られなかったのだ。

ディズニー映画の場合には主人公のキャラクターが間違いなくビジュアル的にも引き立ち上映時間のほぼ大半が彼らの行動を通して物語が推進していくのだがこの部分にこそ彼らと関係性を持つ周辺の人物の描写の弱さがあるのだと思う。ドラゴンボールを引き合いにだすのはどうかと思うが悟空という架空の物語上に存在するキャラクターが持つ圧倒的な善とベジータという実世界にも共通する批評性を持ち合わせた、時に揺らぐ善をどちらも十分な描写で見せる事で人間が持つ美しき【善】を学べるのだ。と勝手に思っている。

表層的には素晴らしくハートウォーミングな映画であり誰もがその美しき物語に感動するのだが、私のようなサブカルをかじり続けた斜めばっかり見ている人間には物足りなさも残るもの。ウォルト・ディズニーが掲げる理念の「誰もが楽しめる」という点だけ見ればこの映画は100点だとは思いますがアニメーションという無限の世界観を提示できる武器を持つ会社の作品として見れば65点くらいなものでした。
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