滝和也

ゴーン・ガールの滝和也のレビュー・感想・評価

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
4.0
彼女を怒らすな…

1番近くの他人。
究極の夫婦関係の
負の部分を
酷たらしくも
ディフォルメした
サスペンスの名作…

「ゴーン・ガール」

デヴィッド・フィンチャー監督のエグみを存分に堪能できる胸糞映画。ファムファタール(悪女)もので10年代の最高傑作。ロザムンド・パイクの硬質的な演技、魅力にハマる…恐ろしい作品…。

ある朝、妻エイミーが失踪した。人気童話作家である実母にヒロインを重ね合わされていた、ちょっとした有名人である彼女の失踪は、夫であるニック・ダンは一夜にして全米注目の的となる。失踪時の形跡から、彼女を殺害したのではないかと疑われる容疑者として…。次々とニックに不利な証拠が出て彼は窮地に追い込まれる…。

10年代を代表するサイコサスペンスの傑作です。あまりのイカれっぷりと胸糞さにラストは賞賛してしまうと言う恐ろしい傑作。

1番近くにいる他人である妻と言う存在への潜在的な夫、男性の恐怖を露骨に具現化しています。全てを知っている血のつながらない他人である妻と言う存在の本気の裏切り…。その存在が見事なまでの知能犯であったら…死ぬほどの恐怖が襲ってきます。究極の夫婦関係の負の部分が炸裂する。(二卵性双生児の妹マーゴの存在は血の繋がった存在としてよりその部分を強調する要素で見事です。)

それは離婚社会であり、訴訟社会であるアメリカの負の部分を見事に笑い飛ばし、一般に存在する嘗て愛し合った者たちが憎みあい、罵倒し合う関係になる、負の部分をより、サイコにディフォルメし、より恐ろしいモノにしたフィンチャーならではの作品でしょう。

その展開や雰囲気はゾディアック的であり、そのサイコさはセブン的であり、ご近所モノでアメリカらしさはパニックルーム的であるかも知れず、フィンチャーのそれ迄の作風に合致し、集大成的でもあります。

そしてその稀代のサイコパス、エイミーを演じるはロザムンド・パイク。その美しくも硬質的な存在感は正に圧倒的。007のボンドガール時から注目してましたが…硬質的な冷たさを感じる容姿と笑顔がエセに見えるのが正に当り役なんでしょうね。(褒めてます(笑))凄まじい名演でしょう。見事過ぎて、ラストは喝采を上げてしまう…。何でしょうね、どうもこの手の女性に魅力を感じてしまうのは…破滅願望が何処か男性にはあるんでしょうね。

ニック役はベン・アフレック。間抜け役と言ったらかわいそうですが、普通過ぎるザ・マンです…。これハマり役でした(笑)追い詰められ、狼狽し、そして…と言う役柄を見事演じてました。

正直…胸糞と噂に聞いてだいぶ寝かしていた作品なんですが、あまりに凄すぎて面白く見てしまったのが本音でしょうか(笑)うちの嫁が…とかはあまり考えられなくて…。

追記…タグにある、失われし20年を求めて が500本に届きました。1994年あたりから2016年までの作品を入れていますが、これは僕が映画を見る本数が減っていた時期の作品集です。クラシックから近年のものまでバランス良く見ていきたいと思ってますので、今後もよろしくお願いします。
滝和也

滝和也