Hiiiraiii

ゴーン・ガールのHiiiraiiiのレビュー・感想・評価

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
4.4
2014.12.12 TOHOCINEMAS六本木

ギリアン・フリンの原作をフィンチャーがどう映像化するのだろうと小説を読んでから映画に臨んだが流石のフィンチャー監督。小説より嫌なミステリーを描いてみせミステリーの枠に収まらぬ男女間の普遍的問題にありきたりではない答えを提示する。

妻殺しの嫌疑がかけられた夫側を前半部分で描き中盤部分で実は生きていた妻側を描く、そして後半部分ではこの両者が対峙するという構成の映画であるのだがこの後半部分が特に気持ちが悪い。憎み合いながら夫婦として生活を続けなければいけないという結婚という恐怖を描きながらその根底の愛が芽生えたその蕾を決して否定できない事を謳う。他者は他者であるのだがその他者に介入したものはたんなる他者にあらず。そういった単純では無い表現をフィンチャーは冷たく、ブラックコメディの要素を持って表現したのだ。

普通の監督がこの題材に着手したならばもっと分かりやすい妻側のサイコパスものとして表現しただろう。それは世界仰天ニュースなどのテレビ番組で繰り広げられる様な安い手段であり人間を描くものより異質な事件を扱ったものになりがちだ。しかしフィンチャーは男女の積み上げたたしかな時間の信用とその時間を重ねたものにしか分からぬ信用からの裏切りを経験しても尚、共に生活するある夫婦の恐ろしい愛情の形を提示したのではないか。

結婚は恐ろしいものなのだという簡単なものでは無い。愛のある方向の行く末の恐ろしさを描き、それさえもまた愛が持つ一つの形なのだ。怖い怖い映画でありました。
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