エソラゴト

天才スピヴェットのエソラゴトのレビュー・感想・評価

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
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『アメリ』の…という枕詞が一生付きまとわれると思うと少々気の毒なジュネ監督。確かに『アメリ』以降は題材やテーマは違っても似たようなテイストが多いのは否めない。

今回も主人公の心象風景や感情を独特のブラックユーモアで映像表現する手法は健在だし、エンドロールでの登場人物紹介の凝りようには毎回感服。子供が本来持っている純粋さと時々顔を出す子供特有の毒や残酷さを映像表現出来るのは正にジュネ監督の真骨頂。

旅の途中の色々なエピソードで印象に残ったのは貨物列車は前方(未来)に向かって走っているが、スピヴェットの乗っているキャンピングカーが逆向き(過去)なので重苦しい回想を余儀なくされているところ。

もう一つはジュネ作品常連のドミニク・ピノンの出演シーン。このエピソードがきちんと最後に効いてくる。T.S君も気付いたはず、家族という松の木が幼くて傷ついたスズメを守っているということを。そしてまた自分が今度はその松の役割を担うことも…。

題材や役柄に子供や動物を扱うのは反則技だと個人的には思うのだが、今回のこの子役は切ない表情やしぐさがとても上手くて好感が持てた。理系なのでいちいち台詞が理論的でこまっしゃくれたクソガキ様なのは間違いないのだが(笑)大人っぽさと子供らしさがバランスよく配合された嫌味のない演技が素晴らしかった。

毎回ジュネ監督には『アメリ』以前のオドロオドロしくて薄暗い近未来SFを期待してしまうので次回こそは原点回帰を是非お願いしたい。そういえば今作からもう7年も経つけれど、このところとんと噂も聞かないけどどうしているのだろう…!?