エソラゴト

ロブスターのエソラゴトのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
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"独り身はツライよ"

【ルール】
・45日間でパートナーを見つけること
・見つからなければ、自分の希望する動物に姿を強制的に変更
・森に逃げ込んだ独身者達を麻酔銃を使って捕獲しなければならない
…等々

今作の世界ではよりによって独り身は"大罪"ー。ルールを守らなければ犯罪者として罰則を受けなければならない何とも不条理な世界。そんな無茶な規則や狂気じみた世界に嫌気がさした主人公デヴィッドが向かった先は同じ独身者達が集まる外の世界=森の中。しかしその森の中で待っていたのは現社会よりもそれはそれは厳しい掟…。

今作は設定からして不条理を通り越してシュール。しかしながら鑑賞中は自分ならどんな特徴を持った人間なのか、自分ならその場その場でどのような態度・行動を取るかを常に自分に置き換えることを念頭に考えさせられる為、精神的疲労や苦痛を余儀なくされる。

閉ざされた空間(ホテルの室内)、解放された空間(森の中)の2つの異なる世界で恋愛や人間関係を描いているが、どちらも「ルール」や「掟」で雁字搦めにされている所為か、自由はなく閉塞感で息がつまってしまう。そんな所も現実社会の投影にも思えて非常に身につまされる感覚を覚えるし、笑うに笑えないブラックユーモア(しかも微妙にズレた)がふんだんに盛り込まれている為に妙に居心地の悪さを感じさせる異質なコメディ作品に感じた。

海外のポスターヴィジュアルを何故日本版ポスターにも使用しなかったのか甚だ疑問。地味だけどこの作品の真意を的確に伝える秀逸なヴィジュアルセンスなのに…。