Hiiiraiii

ジョーカー・ゲームのHiiiraiiiのレビュー・感想・評価

ジョーカー・ゲーム(2015年製作の映画)
-
2015.1.31 TOHOCINEMAS六本木

『SR サイタマノラッパー』シリーズのインディペンデント映画で高い評価を得た入江悠監督によるメジャー大作映画。

個人的には『SR サイタマノラッパー』のファンであり自主製作界に新たな息吹を吹き込んだ入江監督が大手配給映画に進出するというのは嬉しくもあったりする反面、大手ならではのいろいろな政治に巻き込まれないか心配しつつこの映画の公開を待った。

話はズレるが今も第一線で活躍するエレファントカシマシのボーカルである宮本浩次は「今宵の月のように」の大ヒットを記録した1997年当時ミックスの済んだばかりの自らのある曲を渋谷を歩きながらウォークマンで聴いていた。そこで聞こえたのは整然とトリートメントされたいかにもメジャーという音質であり、それにいらだった宮本はその場に叩きつけたというエピソードがある。本作はまさにこのエピソードがぴったりとハマる入江悠がメジャーにトリートメントされた映画になってしまっていた。

日本映画には珍しいスパイ映画でありジャニーズ主演という事もあってビジュアルの印象を整える事に不満はないがあまりにもたくさんの部分が荒唐無稽すぎる。いわゆるご都合主義というものだ。いきなりラストに触れるがあの写真のヒラヒラの展開はいくらなんでも酷すぎやしないか。選ばれし者が入ることを許された「D機関」のトップクラスの能力を持ち合わせた人間がスパイテクニックを駆使し物語を推進してきた最後に訪れるのが偶然ってのはどうなんだろう。あまりにも陳腐すぎやしないか。

細かなディティールの描き方もなんだか物足りない。冒頭の雨の中の陸軍士官学校でのある事件の描き方も浅く行動もセリフも稚拙。こんなんが続くのかなと思ってたら案の定最後まで続くなんて。記憶力の良さの描き方もセリフで説明しすぎやしないか。これはフィクションなのだから記憶力の良さの表現というのはセリフに頼らずとも仕草や視線で描くことも出来るしもう少し観客と一緒に考えを巡らせるキャラクター造形にしても良いのではないか?昨年の韓国映画の傑作『監視者たち』でも記憶力のすこぶる良いキャラクターが出ていたがこの人物の描きかたは何より説得力があったものです。

深田恭子に関してはつっこみどころ満載ですから劇場で確認してください。拷問のシーンとか私にはコントにしか見えませんでした。

ヒットしていて良かったです。入江悠監督の次回作に期待!
Hiiiraiii

Hiiiraiii