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嗚呼!おんなたち 猥歌のKKMXのレビュー・感想・評価

嗚呼!おんなたち 猥歌(1981年製作の映画)
3.5
 長く続いたシェケナ感想文もこれで一区切り。本作は裕也3部作の直前に作られた主演作です。ロマンポルノなので、アマゾンだと18禁でしたよ。なぜかDVDよりブルーレイの方が安かった。

 内容ははっきり言ってただの三文ポルノで、面白くもなんともないガーエー。裕也の安定したクソゴミクズ感も後の3部作に比べると奥行きがなく、特に感じるものもないです。
 ポルノなのでやたらとナオンとセクロスしますが、セクシーに感じるシーンはほぼゼロでした。まぐわっているときの裕也の顔がいつも以上に虫ヅラ(バッタ系)なのがちょっと面白いくらいです。


 本作の魅力はなんと言っても裕也の知られざる名盤『ア・ドッグ・ランズ』の楽曲が多数使われていることです!なんだかんだ言っても俺は『ミュージシャン・内田裕也』に最も興味を持っているので、これは嬉しいし、貴重な資料でした。


【楽曲解説】

 営業で繰り返し歌われる曲は『One Night ララバイ』。宇崎・阿木コンビの曲で、まぁ歌謡曲ですね。
 この曲よりも、ソープ嬢が親と電話しているときに裕也がやってくるシーンで掛るマイナー調のワルツ曲『俺は最低の奴さ』の方がインパクトがあるのに!これは名曲です。
 ♪俺は〜最低の〜奴さぁ、身勝手な男なのさぁ〜
 という歌詞を裕也が歌うとスーパーリアリズムで、その通りとしか言えない説得力があります。裕也の自伝のタイトルにもなり、この男を象徴するような曲です。間奏で切り込んでくるサックスが最強にイカす。


 そして本作のハイライトは裕也作詞(作曲は桑名正博)のストーンズ・マナーの超名曲『パンク・パンク・パンク』のライブシーン!最&高ッッ!
 裕也のミック・ジャガーmeetsジョニー・ロットンといったダーティーなパフォーマンスがめちゃくちゃシビれる。観客にフェラさせたりセンズリしたりと、劇中の裕也は頭脳警察やスターリンの影響も受けてそう(劇中ではジム・モリソンが言及されていた)。ただ、そんな過剰なことをしなくても十分にパワーがある。
 ホントかっこいいし、フロントマンとしての天才性をめちゃ感じる。ホントにこの人音楽の創作活動をあんまりしなかったのが惜しすぎる!もっとパンクに接近して本来の才能を発揮してほしかった。ニューイヤーズロックフェスで若きパンクスたちと交流があったはずなのに、重ね重ね残念です。
 裕也はミチロウとかパンタよりも10以上も年上だし、パンクのゴッドファーザー・イギーポップ大先生より7〜8上なのに、このパンクスそのもののパフォーマンスですからね!裕也とパンクの親和性は間違いなく最高で、本作にも登場したアナーキーらの影響を受けて音楽創作活動に舵を切っていれば、情けなくもカッコいい作品群を残したでしょうね。

 『ア・ドック・ランズ』でもほとんど創作活動をしていない裕也だが(作詞作曲の印税で儲けたくない…って頭がおかしすぎる!)、唯一この曲だけ作詞しています。
 裕也の言語センスは異様で、職業作詞家としての洗練さはゼロですが、うねるようなクソエネルギーがほとばしっています。このアルバムにはムッシュかまやつの曲も収録されてますが、ムッシュ曲の歌詞など所詮インテリの言葉遊びです。裕也のRaw Powerの足元にも及ばない。
 この曲の後半、裕也によるひとり寸劇(酔っ払いとバーのマスターの会話、これが最高)がありまして、こういうのをブッ込んでくるセンスがやはり天才でパンクでオルタナです。パンクってタイトルなのにストーンズ・マナーなのも本質を突いていて最高!ブラウン・シュガー・タイプの曲はライブだと妖しいグルーヴが生まれるので、ロックンロールの魔力を感じますね!


【アルバム解説】

 アルバム『ア・ドッグ・ランズ』は78年に作られ、内容はバラッド多めでソウルに接近したロックという印象です。ジョニー大倉が絡んでいるせいか、キャロル感もありました。
 しかし、時代の影響をほとんど受けていないため当時からしてもやや古臭く、語り継がれないのも宜なるかな。タイムラグがあるから仕方ない面もありますが、78年作でパンクを取り込めなかったのは痛かった。前述した『パンク・パンク・パンク』は名前通りパンクのエネルギーとクソ感がほとばしっているものの、それ以外の曲はまとまりが良すぎるんだよね。裕也はロックンロール原理主義者の印象もあるので、新しい波にのることを良しとしなかったのかも。
 でもね〜、本作でもジョニー・ロットンT着てるんだから、せめてピストルズ〜ジョニサン系のロックンロールなパンクを取り入れる必要はあったと思う。このタイミングでブレイクスルー作品を生み出せなかったのが、ミュージシャン・裕也の限界だと思いました。裕也とパンクは100%シンクロするのにな、残念だし正直悔しい!
 ちなみに、裕也のボーカルはヒョロくてショボく、ナイーブな感じで信用できます。



 ひと山いくらの凡庸なガーエーではありますが、本当の意味でのロックンローラー・内田裕也の天才性を感じることができる逸品でありました。

内田裕也よ永遠なれ!
シェケナ!シェケナ!シェケナ!
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