ひろぽん

リトル・フォレスト 夏・秋のひろぽんのレビュー・感想・評価

4.5
都会から戻ってきて東北の小森で一人暮らしをするいち子が、稲や野菜を育て食事を自分で作る自給自足の自炊生活を、四季の豊かさを通して描くナレーションメインのドラマ映画。

「夏」「秋」「冬」「春」編の4部構成で、本作は「夏」と「秋」編が収録されている前編。そのため、映画で2回エンディングが流れるという不思議な感覚を味わえる。

基本的には橋本愛演じるいち子の心の声のナレーションにより物語が進行されていく。これといって何か大きな出来事があるわけでもないのに、作物を育て収穫してそれを食べるという生きるための行動にスポットライトが当てられており、引き込まれる魅力がある作品。


「夏」
・薪ストーブパン
・米サワー
・グミジャム
・ウスターソース
・ヌテラ
・ミズトロロ
・イワナの塩焼き
・ホールトマト

「秋」
・アケビと炒めもの
・くるみの炊き込みご飯
・イワナの南蛮漬け
・栗の渋皮煮
・干し芋
・合鴨料理
・青菜のソテー


東北の美しい大自然に囲まれながら、知恵と工夫のなされた美味しそうな料理を、食材を「トントン」と切る音やかき混ぜたり炒める音などの生活音の中で味わえるという最大の幸せ。


“自分自身の身体でさ、実際にやったことと、その中で感じたこと、考えたこと。自分の責任で話せるのってそのぐらいだろ?そういうことを沢山持ってる人のことを尊敬するし、信用もする。何にもしたことがないくせに、なんでも知ってるつもりで、他人が作ったものを右から左に移してるだけの奴ほど威張ってる。薄っぺらな人間の空っぽな言葉を聞かされるのにうんざりした。
俺はさ、他人に殺させといて、殺し方に文句つけるような、そんな人生は送りたくないなって思ったよ“

といういち子の2つ下の後輩ユウ太の言葉は核心をついていて心に響く。現代はSNSやネットでいくらでも情報を拾える時代だから全て知ったような気になるけど、こういった自分自信で体験した感覚を増やすには見るだけじゃなく、実際に新しいことに挑戦して経験することが大切なんだなって思う。そう考えると先人たちはネットのない時代に何世代にもわたり試行錯誤して失敗を繰り返しながら後世に知恵を残していったのだから本当に凄い!

地元が東北で兼業農家の祖父母のもとで育ったからこの作品に親近感を感じる。割と今だと農業の機械化が進んでるから、稲刈りなどを手間暇かけて丁寧にやってる姿が新鮮に感じた。採れたてのトマトは凄く美味しいけど、繊細だから野ざらしで育てようとするのは難易度高い🍅

「夏・秋」編は料理や作物の育成への葛藤などをメインに描いているから、人間模様に焦点を当てた「冬・春」編よりは個人的には好み。🌾
都会の喧噪を忘れて癒されたい人にはオススメのスローライフ映画。

物語は「冬・春」編へと続く
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