晴れない空の降らない雨

夜のとばりの物語の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

夜のとばりの物語(2011年製作の映画)
3.4
 オスロ監督のテレビ用短編アニメーション作品をまとめたもの。すべて影絵アニメーションになっており、背景もそれに合わせて平面的で様式的なモダンスタイルで統一されている。デザインといい色づかいといい美しく、真っ黒なキャラクター部分と互いを際立たせている(これは南米や監督が幼少期を過ごしたアフリカで伝統的にみられる手法といえる)。
 正直現代っ子としては、ここまで完全にノッペリしていて情報量がないと少し退屈してしまったが、とはいえ動きも素晴らしいものがある。どうやらシルエットになったことで、フルアニメーションならではの艶めかしさがより良く伝わってくるようだ。
 
 幕間に会話があり、廃墟になった劇場で現代人が即席で話を考え、演じているという体裁をとっているのが興味深い。本作がアニメーションとして選択した平面性の強調が、もともとは「演劇」という伝統的な芸術に由来している可能性? 日本では舞台芸術はすっかりハイカルチャー(か、サブないしアングラカルチャー)になってしまったが、欧米では今でも劇場は市民の身近にある。
 本作の平面的なスタイルは、間違いなくマネ以降の絵画から来ているはずだが、演劇との関係からアニメーションを考えてみるのも面白いかもしれない。