カテリーナ

紙の月のカテリーナのネタバレレビュー・内容・結末

紙の月(2014年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます


宮沢りえに魅せられる

映画の中の梅澤梨花に引き込まれた
圧倒的な存在感と彼女の繊細でありながら
大胆な行動のギャップで次に何をしでかすか検討がつかない 結果固唾を飲んで見守るしかない
宮沢りえはいつの間にこんなに演技派の女優に成長していたのだろう‥‥

何不自由無く優しい夫と暮らす日々の中で
不満という二文字が常に彼女の中で
チラチラと疼いている その微妙な心の揺れを吉田大八監督が見事に演出した
ペアの時計の下りは
宮沢りえの顔の演技ありき
見落としてしまいそうなくらいさりげない
こうゆう演出ができる監督って日本に
少ないので貴重な存在である

邦画の演出の指摘をしたい所だが割愛
感情的になりそうなので‥‥

この映画の原作は角田光代 私はまだ
彼女の作品を読んでいないが
もし原作に忠実に描かれているなら
是非読みたい 映画の中の宮沢りえ演じる梅澤梨花という女の病と小林聡美演じる
隅より子に興味をもったからである
ラストシーンの手前 全て明るみに出た後隅と梅澤が対峙する場面 に強く惹かれた
隅は自ら犯罪を暴き梅澤を窮地に追い込んだ張本人であるにも関わらず梅澤の胸中を
慮るのだ 「 ずっと考えてたあなたの事を」「もし、自分だったら?この後どうするか?」「何をしたいか?」
ずっと自分にも周りにも厳しく生きてきた
隅が考え抜いた答えは徹夜する事
それを黙って聞いていた梅澤は釈然としない 不正を暴いて犯罪者に仕立て上げたあなたが今頃優しくするのは何故?
わたしが惨めになったから立ち位置が逆転したから優しくできるのかと問いかける
この答えに少し驚いた
「あなた、惨めなの?」

その後の梅澤梨花のとった行動と言動は
もっと驚く 女の複雑な心の行方というものは計り知れない 全く想像できなかった展開が待っていた
ここから先は是非ご自分の目で確かめて欲しい

『女という病』中村うさぎ著
を興味深く読んだ時の事を思い出した
犯罪者は皆それぞれの事情を抱えていて
心の箍を少し外しただけで転落して行くものだと感じた 産まれながらの悪人なんていないのだ

金持ちの老人を騙して大金を横領する
しかも痴呆症と分かって堂々と金額を偽り
本人に判子をつかせる大胆なことまでやってのける 憎むべき犯罪者の筈なのに
吉田大八監督は同情を産む演出をしている
一体どんな魔法をかけられたのか?
しかもその魔法は癒しも含まれている
にも関わらず ぴんと張り詰めた空気も
感じられ 一瞬たりとも気を緩めらず
最後まで引っ張られた
この監督の底知れぬ力を知りこれからの活躍に期待せざるを得ない
『クヒオ大佐』より『桐島部活やてるってよ』よりこの作品が好きだ
女の映画として送りだした作品だから
カテリーナ

カテリーナ