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紙の月のtjZeroのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
3.9
主婦の梨花は、パートから銀行の契約社員にキャリアアップ。
お金を管理・運用する仕事に就いている内に、自身がカネの魔力に絡めとられていく…。

梨花の横領が発覚した時、上司である次長がつぶやく。
「なんであなたみたいな人が…」

このセリフの通り、分別ありそうでしっかりしてそうな宮沢りえがヒロインを演じていればこそ、犯罪に引きこまれていくコワさが際立つ。

銀行内のモノトーンと、不倫相手との愛の巣のカラフルなトーンとの対比を際立たせた演出もあざやか。

アメリカ映画の『ペーパームーン』と比べて観ると、より胸に刺さりそうだな~。

”あっち”は、ニセ物の月に真心を込めましょう…みたいなハートウォーミング。
”こっち”は、汗水たらした対価のはずのお金が、勝手に動かしても罪悪感がなくなっちゃうただの記号やデータになってしまう、心凍る感じ。

1990年代を舞台にした本作は、カード・キャッシングの怖さをあぶり出してもいる。
これからは、仮想通貨とかキャッシュレス決済とか、ますますお金の”ペーパームーン化”が進んじゃうわけでしょう?
大丈夫なんでしょうか、それを使う我々の心の中は⁈
自分はまだしばらくは、現金を財布に詰めて、外を歩き回ろうと思います。
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