GodSpeed楓

ゾンビーバーのGodSpeed楓のネタバレレビュー・内容・結末

ゾンビーバー(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

一部で話題になっていた、ジャケからもタイトルからもアホ臭さが滲み出ていて、誰もが思わず観たくなってしまう映画。こういう「気になる」感を出してくるってのは、卑怯極まりない。言い換えれば「出オチ」でしかないのだが、そんな僕も、まんまと観てしまった1人である。

尻軽ビッチなリア充ガール3人+各々のチャラい彼氏3人というアホ丸出しな6人組が田舎へバカンス!という、いかにもホラー映画にありがちな展開のお蔭で「これは酷い目に遭うな!」と誰しもが同じ気持ちになれる素晴らしい幕開け。「キャビン」で数々のテンプレホラーがネタにされている通り、本作もその例に漏れず調子こいたビッチ連中が血みどろのスプラッターな目に遭いそうだなという、皆の想像と期待を本作は決して裏切る事は無い。

さて、本作はタイトル通り産業廃棄物(有り難い事に、放射能とか宇宙線とか謎の飛来物とか、生物の突然変異の原因になりそうなものに世界は満ち溢れているのだ)の力を借りて野性のビーバー達が「ゾンビーバー」となって襲ってくるのだが、こいつらがなかなかに賢い。電話線を食い荒らす手口から始まり、木をかじり倒してペシャンコにしようとしてくるなど、様々な戦略を駆使してくるのだ。しかも今時CGを使わず、どう見ても「ぬいぐるみ」にしか見えないという恐ろしくチープな造形が堪らなく胸を鷲掴んでくる。真っ二つにされてもウネウネ動く姿や、夜中の森で目だけが光っているとか、なんかいちいち可愛らしいので憎めない。コンセントかじって勝手に火だるまになっちゃう姿は非常にキュート。そして有り難い事に、水着ギャルを襲う時はしっかりドスケベなアングルから攻めてくれるのだ。ありがてぇ。

タイトルに「ゾンビ」という文字が入っているため当然感染するのだが、なんとゾンビになるわけではなく、怪我を負ったり死亡した人物が「ゾンビーバー」になるのだ!前歯が取れて、その下からビーバーのような巨大な前歯がニョキニョキと出てくるという変貌ぶりは流石に驚きを隠せない。あとはまぁ、窮地に陥ってパニクって「お前の彼氏の浮気相手は目の前におるで!」とか唐突な暴露をしたり、危機的状態に興奮したのか急にセックスしようとしたりという、B級ホラーにありがちな支離滅裂な展開が続くのだが、突如チンコを食いちぎられるシーンがブチ込まれるので、思わずニッコリできるだろう。やはりバカは残酷かつ痛快に殺害されるのが、最もカタルシスを感じるというものだ。

ラストには助かった友人の片割れがゾンビーバー化して、口では「嫌よ!」とか言っておきながら殆ど躊躇せずに斧で頭をカチ割るという、非常に勢いのあるスピード感に溢れるギャグシーンから、天丼(芸能用語のそれ)をかましてしっかりEND。そのままNG集を披露してからのエンドロールなのだが、ここで流れるテーマソングが驚くべき事に滅茶苦茶良い!「アタック・オブ・キラートマト」という世界屈指の知名度を誇るゴミ映画では、なんとなく作ったようなテーマソングを強制的にフルサイズで聞かされる新手の拷問が用意されているが、本テーマソングの雰囲気は本編に全くマッチしていないにも関わらず、思わず口ずさんでしまうメロウさには唸ってしまう。

近年、ゾンビ映画は量産されすぎて最早ホラー映画としての体はなしておらず、様々なツッコミどころが用意されている事が殆どである。但し、後味を悪くしてみたり、社会派メッセージが含まれていたり、人間の愚かさを提唱してみたり、唐突に主張が匂ってくる作品も少なくない。

そんな中で、本作はブレずに最後まで悪ふざけを貫いており、飽きることなく馬鹿馬鹿しさを堪能できる一本。こういう「最高に出来が良いゴミ」と言っても過言では無さそうなエンタメ作品は、どうしても世界に必要なのだ。

素晴らしい感動は無く、
語り合うほどの考察する余地も無く、
人生に大きな影響を与えず、
パラダイムシフトになる事もない。

でも、楽しい。それが一番大切だ。
真面目に観たら楽しめない。
GodSpeed楓

GodSpeed楓