GodSpeed楓

クローゼットのGodSpeed楓のレビュー・感想・評価

クローゼット(2020年製作の映画)
3.6
2人暮らしの父娘は、妻が亡くなって以降ギクシャクしており、日々ケンカが絶えない。またいつものようにケンカをしたらスネた娘がクローゼットに隠れてしまった。しかし、いつまで経っても出てこないので仲直りがてらクローゼットを開けてみると娘の姿は無く…。

一体犯人の目的は?娘は無事なのか?妻を失った上に娘で失ってたまるか!謎の組織から誘拐された娘を助けるため、元特殊部隊のパパが奮闘するハートフル・アクション!!


…というお話だと思って劇場に行ったのさ…。(調べてから行け)


まさかのガッチガチの怨霊ホラー。ガキの白目って超怖い。そんなつもりで家を出てきてないし、序盤の不穏なイキフンには心と身体の準備ができていなかったため緊張感で胃がキリキリしてしまった。冒頭の除霊シーンや、カラスが窓にブチ当たったシーンでビビらされたあたりから「あれ?オカルトホラー臭がするぞ…?」という僕の勘は間違っていなかったという事だ。(調べてから行け2)

クローゼットという装置、いわゆる場所を固定された"家"を題材にしているにも関わらず、本作の悪霊は"家に巣食う悪霊"ではないのは珍しい。あくまで大人に酷い目遭わされたと判断された子どもの悲しみや寂しさをトリガーにクローゼットに現れるという、触れるものは皆殺しの佐伯家の皆様(呪怨)とも違うタイプの悪霊だった。雑に説明すると"ガキンチョが悪霊にさらわれる"という映画だが、親子関係の希薄さに伴う児童の孤独や、格差社会に伴う貧困層の現実、韓国での行方不明児童の多さを"悪霊"という舞台装置を使って描いたものとなっている。悪霊自身も生前似たような目に遭っている事から、救済として攫っているのでジャンルとしてはドタバタ・スプラッタ・ホラーではなく、悲しみに満ちた社会派人情ホラーと言える。

除霊師として出演しているキム・ナムギルの胡散臭さはピカイチ。身分詐称+不法侵入した上に謎機械を宅内で振り回すところから始まるので、第一印象は「哭声 コクソン」のファン・ジョンミンくらい信用ならない。作品のイキフンに似つかわしくないレベルで気さくなお喋り野郎のため、このスタンスに慣れるまでは「なんやこいつ」と思っているであろうハ・ジョンウにバリバリ感情移入できる。しかし、話している内に悪い奴じゃない事はすぐ分かり、ハ・ジョンウに「『神と共』に観た?」というメタ発言をカマすあたりで、スッカリ彼の虜になってしまうのは間違いない。
※しかも観てないらしい。

しかし、オチャラケ野郎がガチった瞬間は最高にカッコいいというのは遥か昔から定説とされている鉄板演出であり、本作もその例に漏れない。ハ・ジョンウが異界(正式名称忘れた)に突入している際の祈祷シーンは最高に痺れる。

尚、後輩役のイム・ヒョンソンは出番が非常に少ないのだが、顔だけモザイクかけてインタビューを受けているシーンのおかげで非常に印象深い。体型に特徴があるんだから全体図を映すのは配慮が足りな過ぎて笑う。当然の如くハ・ジョンウ本人に即バレしていたのは笑ってしまった。本作のハ・ジョンウは気難しい方だと思うので、本編後に関係修復できなかったら彼はメディアのせいにして平謝りした方が良い。

悪霊サイドにも同情できるし、親子愛にも感動できる。
ほどよく怖くて泣けるホラー映画として、十分面白い。
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