GodSpeed楓

犯罪都市のGodSpeed楓のレビュー・感想・評価

犯罪都市(2017年製作の映画)
4.2
実話を基にした作品であり、中国マフィアVS新興勢力VS韓国警察という3つ巴を描いている。泥臭いパワータイプのアクションが売りのマブリーは相変わらず危険な拳(張り手)を振るっているが、敵キャラが容赦ないナイフ使いというところでバランスを上手く調整している。中国マフィア側のボスを演じるパク・ジファンは、敵ながら憎めない良いキャラだ。
※直前に「無双の鉄拳」を鑑賞したという点も存分に加味されている事はご留意頂きたい。
3つ巴という点で発生しがちな問題点である難解さも無く、各勢力のパワーバランスも分かりやすいものだった。「Zガンダム」とは大違いである。(でも大好き)

"どいつもこいつも「悪党」ばかり"というキャッチフレーズが目に付くので、「韓国版の仁義なき戦いかな?」と思ってしまいがち。確かに複数勢力の悪人どもが跳梁跋扈する実録モノではあるが、実はジャケで堂々とした大名行列を披露しているマブリーは悪人側ではなく、見た目がイカついだけの正義感の強い刑事役である。「BLITZ」でのステイサムのような男だが、相違点としては無茶して嫌われるタイプでもなく、やり手の"頼れるアニキ"タイプである。超お似合い。

好き放題跳ね回って街の秩序をめちゃくちゃにしたゴミ野郎がラスボスだが、散々暴れたツケはボコられてからの逮捕程度である。逮捕されそうになったら最後っ屁をかまして、それをマブリーが返り討ちで殺害して正当防衛!セフセフ!みたいなラストだと思っていたが、当てが外れた。よく考えると、苦虫を噛み潰したような顔で終わる事が多い韓国映画が多い中で、マブリーの作品は後味が悪かったり敵側を殺害したりするエンドがあまり無い事に気づいた。「無双の鉄拳」ではラスボスなんて本作よりも遥かにクソカス野郎だったにも関わらず、マブリーの危険極まりない拳で成敗されるに留まっている。もしかすると、最後には正しく罰するという、
見た目に反した(?)正義感と慈愛こそが、ある種の"優しさ"を内包したマブリーの人柄を感じさせるのかもしれない。

しかし、ヘイトを稼ぎまくった悪役は、やはり無茶苦茶残酷に殺害されてほしいという淀んだ感情は確かに存在する。別に僕は正義マンというわけでもないのだが、これは僕の成長過程に問題があるのだろう。その一旦となっているのは間違いなく「ブレスオブファイア4」で最悪のゴミカスクソ野郎として君臨したユンナのせいだ。人間を生け贄として発射する"呪砲"を撃ち、着弾地点周囲一帯を生き地獄に変えるという所業を成し遂げたり、ヒロインの姉を人体改造してダンジョンに作り替えて殺さざるを得ない状況に陥らせたり、罪のない少女を残酷極まりない拷問の末に"呪砲"の生け贄にするという鬼畜の所業を繰り返したユンナ。そして何も罰を受けずまんまと逃亡せしめて生存エンドをキメたユンナ。吐き気を催すような悪は始末すべきだと、「ブレスオブファイア4」で学んだ経験が、こういった歪んだ価値観を生んだに違いない。

余談だが(いつもの如く全体的に余談だが)、僕は「悪人伝」でマブリーにハマった"にわか中のにわか"なので、最近立て続けにマブリー主演作を鑑賞している。そこで何故ここまで全然観た事が無かったのか考えたところ、つまるところ"邦題が絶妙につまらなそう"だという点に気付いた。「守護教師」「ザ・ソウルメイト」「無双の鉄拳」「犯罪都市」などなど…どうにかもう少し魅力的な邦題にして頂けると、非ドンソクファンでも気軽に手に取れるのでは無かろうか。ちなみに、上記は全部結構面白かったので観て損は無いと思われる。マブリーへの愛が成せる業かもしれないが。

や、だいじょうぶ…、本作もマブリーはかっこいいですよ…。
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