GodSpeed楓

魔法少女リリカルなのは DetonationのGodSpeed楓のネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

大前提として認識頂きたいのは、僕は本シリーズの大ファンだ。

「The MOVIE 1st」は劇場へ4回、「The MOVIE 2nd A's」に至っては6回も足を運んでおり、どちらも初回盤Blu-rayを購入した上で鑑賞を繰り返している。そして、その全ての鑑賞で号泣するという結果からも、盲目的なファンと化していた自覚があり、俗に言う「よく訓練されたファン」の1人だったと呼ばれても、返す言葉が無い程度にはファンだと思っている。そういった、こじらせたファンが書いたレビューである旨を念頭に置いた上で、本レビューを参照頂けると幸いである。
※どうせダラダラした長文なんだろ、という指摘は全くもって正解である。あなたは聡明な方だ。

本作の概要としては、18禁アダルトゲームである「とらいあんぐるハート3」のスピンオフとして始まり、瞬く間に独自コンテンツとして大人気を博したシリーズの最新映画だ。スピンオフである本シリーズのスピンオフまで存在する(ViVid、Forceなど)ほどの大型コンテンツであり、TVシリーズのリメイク劇場版シリーズも大盛況に終わった。前作「The MOVIE 2nd A's」から5年ぶり、そしてこれまで描かれなかった"「A's」から「StrikerS」までの空白期間を描く"というお触書で発表された、ファン待望の続編として制作予定だった。

しかし、蓋を開けてみればストーリーはPSPでリリースされたゲームの「THE BATTLE OF ACES」、そして「THE GEARS OF DESTINY」を基に制作された一種の"アニメ化"作品となっており、「魔法少女リリカルなのは Reflection」、「魔法少女リリカルなのは Detnation」(本作)という名を冠して実に3時間を越える前後編という大作として発表された。

これは自身の問題ではあるのだが、"「A's」から「StrikerS」までの空白期間を描く"という発表があった事で心の底から楽しみになった僕は、それ以上の情報を完全シャットアウトする事にしていた。何せ、これまでの劇場版2作はあくまで"TVシリーズのリメイク劇場版"であり、遂に「完全オリジナルの劇場版」が制作、それも空白となっていた期間を描いてくれるなんて長期に渡りファンであった事を本当に喜ばしく思った。そうして公開日を確認して劇場に赴いた時に発覚する"ゲーム作品からの流用"。これほど足場を崩されたようなショックは、近年なかなか味わった事が無かった。

大成功を収めたシリーズにありがちな悲劇ではあるが、前作までの監督の草川啓造とキャラクターデザインの奥田泰弘という偉大なる両名の交代という衝撃的なニュースが事前から入っていた。(流石にこれは知っていた)
新規で描かれたキャラデザに最後まで適応出来なかったのは、こじらせたファンの悪い点である事は認めるが、全体的に作画が甘いという点は本当に救いようが無い。TVシリーズ並みの作画崩れのまま劇場版としてお披露目しているのだから、目について仕方が無いのは当然だ。そもそもアニメ映画のクオリティが年々上昇しているという現状が業界的に健康的では無いと言えるかもしれないが、だとしても、そういった背景があるにも関わらずこんなにガタガタな作画で完成品として提供されても困惑するしか無い。

そもそも前作、前々作はTVシリーズの無駄を省いて劇場版サイズにする事でメインストーリーの熱さをブリバリ前面に出した超絶テンポの作品となっていたにも関わらず、本作は前後編にする事で、いちいちテンポが悪いものになっている。当初の敵、新たな敵、真の敵という形で次々やるにはタメが短く、各敵に対する思い入れが薄いため、新たな敵が出てこられても大した驚きや衝撃も薄い。TVシリーズでやる前提であるのであれば、もう少し日常パートや修行パートを追加する事で成立したのではなかろうか。

ゲーム用に制作された敵キャラのデザインやキャラクター性、台詞回しの安っぽさは尋常では無い。何故角川はこんな適当にどっかから拾ってきたテンプレートのような敵をデザインしたのか疑問であり、彼女たちが喋るたびに脳が冷えていくのを感じてしまう。俗に言う"サムい"というやつだ。

尚、ストーリーとしては特段悪い点は無い。「Reflection」単体ではペラッペラであり、真の敵も判明しないし、何一つ決着もつかない不完全燃焼極まりないものだが、あくまで後編を観た上で評価すべきである。登場キャラの多さによる各人の盛り上がりが薄く、ちょいちょいハイライトにされてしまうという薄さは逃れられない宿命のようなものだが、生かすのが難しそうなザフィーラやシャマルらの活躍、そして追加メンバーの命を燃やすような戦いも描かれているので様々なファン層へのサービスは十分に果たしているだろう。その代わりに、明らかにファンの多いヴィータ、シグナムの活躍が少なくなっているのは救いようがない。

実はこれまで描かれていなかった、なのはが自身の人間性と向き合うシーンや、新装備、新能力の実装や発動に伴う激熱展開が「Detnation」に待ち受けているので、様々な要素に目を瞑る事ができる、若しくはそもそも気にならない方であれば存分に楽しめるだろう。
※「アクセラレイター!!!」以降で目を離せるシーンは存在しないぐらい夢中になれる。

上述した通り、こじらせたシリーズファンとしては到底看過できない要素が多すぎるため、真っ当に評価するような事は出来かねる、というのが僕の意見だ。ハードルの高さ云々ではなく、そもそも最低限満たさなければいけなかった大前提(大風呂敷とも言う)すら達成できていないのだから、致し方ない事だろう。その為、「Reflection」は公開初日に劇場に足を運んだものの、「Detnation」に至っては劇場へ足を運ぶこと無く、またBlu-rayを買う事もしていなかった。映画趣味に復帰した事で、ようやく最近になって鑑賞した有様である。

タイトルに「The MOVIE 3rd」という名を冠していないのは、意図的に"2ndの続編ではない"という意味を表しているのであり、次に制作される映画こそ「The MOVIE 3rd」という名を頭につけてくれるのを切に願う。監督とキャラクターデザインが変わっているのも、あくまで本作は"ゲーム準拠の番外編"で決してA'sの続編では無いからで、「StrikerS」で語られた過去エピソードについては改めて草川&奥田コンビで制作される「真のThe MOVIE 3rd」で描かれるのだろう。最初っから「ゲーム準拠の前後編で制作します」って言ってくれてれば、もうちょい…。

ちなみに、本作を鑑賞した結果、僕は大号泣した。
素晴らしいラストでしたね。(バカ)
GodSpeed楓

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