優しいアロエ

ヤング・アダルト・ニューヨークの優しいアロエのレビュー・感想・評価

4.0
 冒頭から画面いっぱいに映る可愛い赤ちゃんの顔。だが、それは主人公たちの赤ちゃんではなかった。
——————

 都会に溶け込んで生きる人々をイタ〜く演出し、夫婦や仕事といったごく普遍的なテーマを描くノア・バームバック作品らしさ、マンブルコアの軽い肌感覚はいつも通り。ただ、なかでも本作は「赤ちゃんができない」ことに着目した映画であった。

 赤ちゃんができないという事実を主人公夫婦は呑み込めているように見えるのだが、微妙に冷めた感じ、すれ違った感じが見え隠れする。二人がひと回り若い世代の夫婦と親交を深めるようになった理由には、若い世代への憧憬・嫉妬のようなものが密かに芽生えていたからだと捉えられる。ナオミ・ワッツとベン・スティラーのシワを湛えた感じがまた老いの虚しさや焦燥を引き立たせてくれた。

 しかし最終的に、「なぜだかよくわからないけど前を向き出す」というのがバームバック流。重すぎず、人生の教訓としていつでも自分のそばに置いておきたいような作品たちばかりだ。

 本作のラストでは、主人公夫婦がひとつ大きな決断に踏み切るわけだが、「育児への憧れ」だけでなく「育児の辛さ・面倒臭さ」も劇中でちらほらと示唆していたバームバック、最後まで抜け目ないのが流石といったところ。「本当に大変なのはここからなんだよ」と黒い笑いで締めるのであった。
優しいアロエ

優しいアロエ