フラハティ

ねこぢる草のフラハティのレビュー・感想・評価

ねこぢる草(2000年製作の映画)
4.1
なるほど、わからん。


漫画『ねこぢるうどん』の映画化。
作者は31歳の若さで自殺。
本作は作者の死後に制作されたもので、原作の直接的な映画化ではない。

たった30分ほどの短編(中編?)ではあるが、内容的には結構濃い。
冒頭で溺れる弟ネコと、熱でうなされる姉ネコ。
臨死体験かのようにぶつ切りにされた夢のような空間。
真夏に、姉の魂を取り戻すためのロードムービー。


かなり難解。
というか、夢の断片がいくつも繋がって描かれているようで一貫性がない。
物語として意味があるのかがいまいち自信ないが、死を通しての運命や時間、生き物の在り方を描く。

劇中でのセリフは無いに等しく、ネコのセリフが吹き出しなのがかわいい。
その分、悪夢のような映像と音がとてつもなく印象的。
サイケっぽいが、実は意外と伏線もあったりするので作り込みは半端じゃない。
舐めるような映像と、象徴的な表現で独特な世界を構成する。
可愛らしい絵とのギャップをただ狙っているだけでなく、明らかにそれ以上の深みがあり芸術性も顔を出す。


とにかく生きるということに正直。
ブタが自分の体を食べるとか、血などのグロテスクな表現もある。
元々原作自体もブラックユーモア的な物語であり、作者自体の特殊な世界観によって形成されている(らしい)。

地球で起こることが神によって創造されているが、あくまでもこの世界観は内省的。
運命というしがらみから、生物の営みや死を経ることで世の中の森羅万象を縮小して描いているように見える。
内省的な世界(少なくとも観客にはそう見える)なのに、なぜこの世の全てが明かされたかのような閉塞さがあるんだろうか。
命が尽きるなんて、誰もがたどり着く場所で避けられない事象。
一種の諦めもあるようで、現実の虚しさのようなものも感じる。
だったらその先の世界もあれば楽しそう。そんな世界なのかも。

ラストはドキッとする。
ほんと衝撃だった。
作品全体の憂いや切なさはどこから生まれているんだろうか。


普段アニメ映画なんて全く観ないから、この作品をきっかけにはまりそう。
日本のアニメ映画ってすごいんだな。
改めてそう思う。
フラハティ

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