エソラゴト

ラブ&マーシー 終わらないメロディーのエソラゴトのレビュー・感想・評価

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作品発表後、半世紀近く経つ現在もなお世界各国の多くのミュージシャン達に多大な影響を与え続けるマスターピース『ペット・サウンズ』。その大傑作を世に送り出したビーチ・ボーイズの中心メンバー、ブライアン・ウィルソンの数奇な半生を綴る物語ー。

ストーリーは『ペット・サウンズ』製作過程を描いた60年代をポール・ダノが、その後の波乱の人生の80年代をジョン・キューザックの2人によって交互に対比させながら進んでいく。

ビーチ・ボーイズというと世間的には夏やサーフィンの印象が強いが、個人的にはビートルズの『サージェント・ペパーズ〜』が影響を受けた作品としてこの『ペット・サウンズ』から聴き始めたせいか、ブライアンの人となりや才能の開花、スタジオでの様々な工夫を凝らした製作過程等を大変興味深く観る事ができた。またポール・ダノの歌声や演奏シーン等の芸達者振りや真骨頂でもある表情や心情の繊細さの演技には感服させられっぱなし。

逆に80年代は見るからに嫌悪感溢れる顔面のポール・ジアマッティの度を越した悪徳医師振りが重苦しくて息が苦しくなる。メリンダの女神っぷりが余計に際立って見えてしまう程。

俗に云われる「天才」と呼ばれる人々には我々凡人には想像も付かない位の苦悩や葛藤、狂気が渦巻いている事を今更ながら痛感。見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたり…。それを音楽、絵画、映像、舞踏等といった我々の目に見えるカタチに表現または創造する芸術家の信念と根気には畏敬の念を抱かずにはいられない。