Hiiiraiii

フューリーのHiiiraiiiのレビュー・感想・評価

フューリー(2014年製作の映画)
4.1
2014.12.14 有楽町ピカデリー

第二次世界大戦、FURY(憤怒)と名付けられた戦車に乗り込んだ5人の兵士を描いた戦争映画。

我々観客はフィクションと知りながらもこの悲惨で惨い135分間の戦争体験を強いられる。手違いにより戦車兵として配属されたローガンを非戦争体験者の我々と同じ視点で描く事で狂人として変化してしまう人間の恐ろしさを目の当たりにする。例え英雄と祭られようと人が人を殺める事に無情さ無意味さを感じ人間として失われていく何かを突きつけられる。

たった一日の出来事である事、戦車という密室での展開が緊迫感を生む。たった一日で人が変わる事を伝え人の生き死にが小さな密室で展開する恐ろしさをも伝える。この映画はヒロイズムとはかけ離れたものでありあくまで戦争という人と人が争う惨さを伝えてゆく。勝者であるはずのアメリカがこのような映画を描くという事が興味深い。ささやかで甘酸っぱい青春など一瞬で崩壊し混沌とする戦場を映し続ける事で我々は何を思わなければならないのか。その答えは明白であり戦争は人の生死だけに関わらず関わる人間全ての青春まで奪うのだ。

圧倒的不利の状況化で国を思い戦ったであろう先人達の本心はこの映画で描かれた様に自発的ではなくやらなくては生きられない状況だったはずだ。フィクションではあるがこの様な葛藤が当時何千何万という箇所で繰り広げられていたと思うと胸が痛くなる。映画が戦争を扱う時、後世に伝えてゆくべきメッセージはこの映画の様でなければならないとさえ思う程に戦争を追体験し悲惨なものを見せられた。

映画の最後でローガンが絶望的な戦いの中で生き残りドイツ兵と目を合わせるシーンがあるのだがこの部分の演出が凄かった。敵軍ではあるがその生死をかけた戦いで見たもう一人の自分だという事。はたしてこれは現実か夢かは分からぬが戦争を憎しみ嫌ったローガンが見たもう一人の自分であり決断だった。それは未来ある決断でありこの陰鬱なテーマの映画の一つの希望だったのだ。
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