Hiiiraiii

0.5ミリのHiiiraiiiのレビュー・感想・評価

0.5ミリ(2014年製作の映画)
3.7
2014.12.17 テアトル新宿

人が、肌が触れずに近づける距離。0.5ミリ

196分の大長編にふさわしい人間ドラマは一つずつ重なってゆく。介護ヘルパーを職とするサワは派遣先でトラブルにあい家も金も仕事も失う。そんなサワは訳あり老人を半ば脅迫に近い形で彼らの家に住み込み無理矢理面倒を見ていく。その一つ一つのエピソードは導入こそ強引ではあるものの純粋なサワの心にうたれた老人達は少しずつ受け入れ何かをサワに捧げ去っていく。

わらしべ長者の如く老人たちから何かを受け取るサワの無欲さが狂言回しの役として機能し老人それぞれの境遇はまた世相を表す。寝たきりで家族に荷物の存在、他者との繋がりの無い孤独な存在、プライドを捨てられない存在など様々な老人達にサワは0.5ミリの距離感で接し何か受け取る。それは老人達が長く生きてきたそれぞれの【生】だ。そしてサワは次の世代に受け渡す役目を果たしていくと同時に自らの生にも還元していくのだ。

介護がテーマとなると重い題材になりがちでありこれを逆手にとった秀作『ペコロスの母に会いにいく』のささやかな感動ともまた違う。笑える部分も沢山ある反面、ドキッとさせられる大まじめな部分も持ち合わせる。196分間に凝縮された人間達の様々な感情に人間としての【生】を感じるのだ。

主演の安藤サクラの素晴らしさももちろんだが名優、津川雅彦という存在がこの映画の大きな膨らみに欠かせない存在感を醸し出す。戦争体験者として語るワンカット7分の名演技はまさに必見でありました。

体力が必要な長尺ではあるがきっと何か大切なものを受け取れる映画なのでオススメですよ。
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