アタフ

裁かれるは善人のみのアタフのレビュー・感想・評価

裁かれるは善人のみ(2014年製作の映画)
4.0
アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の作品は『ラブレス』に続き2本目の鑑賞。

雄大で美しいロシアの自然の風景の元、土地を奪おうとする悪徳市長と、土地を持つ一家、そしてそれを助けるモスクワから来た弁護士の戦いが描かれる。普通の映画であれば、悪徳市長を正義の弁護士が打ち負かす、そんな展開になっていそうな話ではありますが、流石はズビャギンツェフ監督、そんな優しい展開にはしてくれない。

『悪は滅びて正義が勝つ、そんなものはおとぎ話だし、助けてくれる神だっていやしないよ』監督からそう言われているようなラストの展開に、ただただあっけにとられる。この救いのなさは、ラース・フォン・トリアーの映画と近いかもしれませんが、ズビャギンツェフ監督のほうがより現実問題に即している気がする。あっちのほうは現実離れしたものが多いですからね。

一家が射撃を楽しむ際に一種のギャグとして使用されるある的、悪徳市長の事務所に堂々と飾られるプーチンの肖像画、政治批判を映画に潜ませるのも、『ラブレス』でありましたね。

この物語が意図するところとして、"神は存在しない"という『沈黙/サイレンス』のような物なのだろうか。そもそも主人公一家についても、弁護士についても、またその友人たちも、完璧な正義ではないし、正しい人たちというものでもない。神もいなければ正義も悪もない、そこに広がるのはロシアの寒々とした広大な大自然。荒々しい海、打ち上げられたクジラの白骨死体。

自然に対して人間の無力感
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